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第17話
ふわりと唇を合わせると、知っているはずなのに知らない柔らかい感触に驚いて、江崎くんが少しだけ逃げました。森永さんはそんな江崎くんを追いかけます。追いかけて、もう一度、キス。
柔らかく唇をかんでもう一度唇を合わせ、舌で江崎くんの唇をノックします。「開けて」とねだられて、でも江崎くんは森永さんの舌から逃げました。
「なに?」
唇を追いかける森永さんが聞きました。
「は、ず……んっ……」
恥ずかしい、と言う言葉は直接森永さんの口腔に飲み込まれます。しゃべる隙をついて舌が差し込まれ、口内を舐められました。
「恥ずかしいの? 何度もしたのに?」
クスリと笑いを含んだ声、唇を離さないまま話されて「ぁ」と翻弄された口端から涎があふれそうになり、江崎くんは唇を離そうとしました。けれど逞しい森永さんの手にガシリと頭を捕らえられて逃げることができません。
「ぁ……、ゃ……、んっ、やら……」
嫌がる言葉を無視して、森永さんの舌が江崎くんの口腔を犯します。森永さんの舌になぶられ、舌を吸われ、段々と江崎くんの恥ずかしさも理性も溶けて無くなっていきます。
「んんっ、ぁっ……はっ……」
森永さんの中に直接響く江崎くんの声が、ズクズクと森永さんを刺激して昂らせます。
江崎くんの、力の入らなくなった指先が森永さんのシャツの胸元を握りました。すがるように触れる指の感触。しびれがゾクリと背筋を走ります。その感触はそのまま江崎くんに伝わり、江崎くんの身体を震わせます。
「ぁっ……んっ」
堪えられない官能の声に、ようやく森永さんが唇を離しました。
江崎くんは焦点を失った瞳で、ぼんやりと目の前の森永さんの眼を見つめます。唇は濡れて端からは涎が垂れ、舌と唇はなぶられ吸われて赤く鈍くしびれています。
その表情が可愛くて、森永さんは視線を合わせたまま江崎くんの手を握りました。握られた手の温かさに江崎くんはハッとして森永さんを見つめ直します。
「……この先、してもいい?」
今更、とは思うけれど森永さんは江崎くんに確認しました。前回は、なんとなくの同意で勢いのまま進めてしまいましたが、今日はお互いの気持ちを確かめながら進みたい。好きだからこそ、受け入れ受け入れられることを実感したいのです。
ポポポと赤くなりながら、江崎くんがうなずきます。
「して、ください」
「うん、ありがとう」
森永さんがチュッとまだしびれの去らない唇に、軽いキスを落とします。
「ありがとって、変なの」
「そう?」
「俺だって……、森永さんに触って欲しいし、触りたかった……ですよ」
「……そう? ありがとな……」
森永さんは涙が出そうになり、後半は抱きしめた耳元に囁きました。
「だから、」
「そう思ってもらえるだけですげー嬉しいんだよ。だから、ありがとう」
「森永さんも、触りたいって思ってくれました?」
「ずっと、思ってるよ。今も、すげーがっつきたいの我慢してる」
へへへっと可愛く笑って、江崎くんが森永さんにきゅっと抱き付きます。
「じゃあ、森永さんも、ありがとーございます」
「うん……」
森永さんは江崎くんの耳にキスをすると、その柔らかな耳たぶを噛み切りたい衝動にたえて「かわいい」と呟きました。耳から頭に直接響く声にゾワリとして息をつめると、反動で「ん……」と声にならない吐息が江崎くんの口からもれます。
「あっ……」
「ん? なに、耳弱い?」
「違くて、あのっ……」
「違うの? ビクビクしてるのに」
「んっ……そ、じゃなくて、あのっ」
「なに?」
耳だけでビクビクと反応する江崎くんが可愛くて、森永さんはついつい執拗に耳を舐めます。
「あのっ……準備……して、ないんで……」
真っ赤になって途切れ途切れに訴える江崎くん。
「準備?」
「ネットで調べて……、えっと、準備した方がいいって……」
「調べたの、自分で?」
驚いてピタリと止まった森永さんにコクリと江崎くんがうなずきます。
「前は何もしてなかったし……、えっと、だから……」
「無理しなくてもいいのに、俺は気にならないし平気」
「俺は気になるし、やなんですよっ!」
意気込んで言われて『それもそうか』と納得する。
「じゃあ、準備する?」
「自分でしてくるので……」
「手伝うのに」
「それってほとんどスカ……森永さん、変態? ……いや、ハードル、高いです……」
しゅんとする江崎くんに手伝いを断られてしゅんとする森永さん。
「自分でできる?」
「練習しました!」
「練習……したんだ……」
江崎くんは、どうだと張り切って言ったものの『ゴクリ』と生唾を飲む程に喰いつかれて恥ずかしくなります。「えっと、準備してくるので……」と自分のバッグの中をガサゴソあさり、ブツを持ってひゅんとトイレに消える江崎くんです。
「見ないでくださいね、絶対に、絶対見ないでくださいね!」
しっかり念を押していくことも忘れません。
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