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第19話

 グイと近付いた拍子に二人の間に挟まれた泡が飛びます。 「うわっ……」 「森永さん、サンタさんみたいになってますよ」  江崎くんは笑って自分の顔を拭うと、その手で森永さんの口元に飛んだ泡を拭います。泡の下から現れたぽってりとした森永さんの唇。江崎くんは目が逸らせなくなり、吸い寄せられるように唇を寄せました。  あと少し……  二人で近距離で見つめ合うと、森永さんが目を閉じてあごを上げキスをねだります。その表情が男らしいはずなのに妙に可愛く、江崎くんはドギマギしながら触れるだけのキスを落としました。  唇の感触に目を開けた森永さんと再び見つめ合うことになって、江崎くんは視線を逸らします。  もう無理! 恥ずかしくて死ぬ!  そんな江崎くんの羞恥はわかっているはずなのに、森永さんは江崎くんの唇を追いかけてキスをねだります。ちゅっちゅと触れるだけのキスを繰り返しているうちに、もっと触れたくなり森永さんの首筋に顔を埋めて抱き付きました。 「あ、の……」 「ん?」 「休憩、もういいので……、はやくぅ……」  震える声で江崎くんに縋り付かれて森永さんの余裕の仮面が崩れます。強引に江崎くんを引きはがし、そのまま乱暴に唇を合わせて口腔を貪りました。 「んっぅ……」  乱暴に口内を犯された江崎くんの呻き声にゾクリとして、くちづけた時と同じく乱暴に引きはがし、熱で上気した江崎くんを浴槽から引き上げます。  足元のふらつく江崎くんを支えてシャワーで泡を流し、身体を拭くのもそこそこにベッドへと江崎くんを押し倒します。 「あっ……ベッド、ぬれちゃう……」 「そんなの、いいよ」  何がいいのかわかりませんが、森永さんにはもう身体を拭ってあげる程の余裕もありません。一刻も早く、抱きしめたい。  ベッドの上、濡れたままの身体で転がされて自分より逞しい身体に伸し掛かられ、江崎くんは倒錯的な気分で森永さんを見上げます。  森永さんは、熱を帯びた瞳で見上げられて、優しくしたい気持ちと、無茶苦茶にしたい気持ちの狭間でグラグラと揺れました。  乱暴に抱き締め抱きつぶして征服したい、この男は自分のものだと証明したい。だけど同じ強さで、優しく抱き締めて好きだと伝えたい。  森永さんは喉元に噛み付きたいのを我慢して、江崎くんを抱き締めます。湿った身体の温かさと興奮して緊張している鼓動が、直接森永さんに響いてきます。森永さんだって江崎くんに負けない程にドッキドッキして、強く働き過ぎている心臓の振動に思わず森永さんは笑いました。 「江崎、心臓の音わかる? 俺か江崎のかわかんない程ドキドキしてるの……」  妙に色っぽい掠れた声でささやきます。そんな声でささやかれたら……、 「絶対、俺の方がヤバイです……。心臓飛び出そう」  そうなりますよね。 「腹上死とか笑えねー……」  緊張をほぐそうとして言ったのに、江崎くんは「?」と腹上死を知らない様子。 「やってて死んだら笑えない、って言ったの。……ゆっくりするから、江崎もそんなに緊張しないで」 「緊張すんなとか、無理です」 「……うん、でもさ、」  そう言って、森永さんはただ江崎くんを抱き締めます。ただただ抱き締めて、江崎くんの身体から力が抜けるのを待ちました。どれくらいそうしていたでしょう。 「ほら、こうやってるだけでも気持ちいいだろ」  少しずつ緊張の解れてきた江崎くんに話しかけます。 「きもちいいけど……」 「いいけど?」 「ちんこ、勃ちっぱなし……。もぅ、触りたい……」  消え入りそうな声で申告されて、柔らかくなり始めていた森永さんのちんちんが反応して固くなります。 「ぁっ……」  その感触に江崎くんの吐息があふれます。 「……ん、ごめん。江崎、若いもんな……」  そう言うと、森永さんは江崎くんの首筋に舐めるようなキスをして、股間に手を伸ばします。だけど、ちんちんには触ることなくサワサワと柔らかい毛をなでて、そのホワホワとした感触を楽しみます。江崎くんは敏感な際を愛撫されて期待に蜜を流し、ヒクリヒクリと揺れました。  けれど森永さんの手はそのまま中心に触れることなく、期待させる動きばかりを繰り返しています。唇は丹念に江崎くんのポイントを探りながら耳、首筋、鎖骨へとたどってゆきます。  時折、息を詰め思わずといった風に吐息をもらし、江崎くんは森永さんの頭を抱えました。狩り上げられた毛先に指が埋もれる感触で、森永さんを抱き締めているんだと実感します。 「それ、くすぐったい」 「ん、くすぐったいだけ?」 「……っ」  鎖骨の下を舐めながら唇を離さずに喋られて、江崎くんは身を捩りました。その動きは図らずも森永さんに股間を擦り付けることになり「早く触れって?」と笑われてしまいます。 「ぅう……いじわる……森永さんのちんこだって勃ってるのにぃ」 「そりゃ勃つだろ、江崎が可愛くねだるんだから」 「ね……だっ、て、ないですって」 「ん? ねだってないの? じゃ、触らなくてもいい?」  鎖骨から胸の周りへと辿り、下の毛をくるくると指に絡めて遊びながら「これ」と腰を揺すって江崎くんを誘います。 「……触って……」 「触るだけでいいの?」 「……触って気持ち良くして……」 「気持ち良いのがいいんだ? ふーん、じゃあおっぱいも舐めないとね」 「そっちは、いいっ」  森永さんの舌はいつの間にか胸の突起のすぐそばまで辿り着いて、先端に触れないよう乳輪を舐めまわします。触れそうで触れない、ギリギリのそこを吸われてピクリと江崎くんの身体が跳ねました。 「こっちも、気持ち良いの忘れちゃった? ほら、こうやって……」  今度はためらわずに、カリと歯先を先端に当ててから乳首を舐め吸いあげます。 「あっ……ぁぁぁっ、やめぇっ」  江崎くんは止めて欲しいのかねだっているのかわからない動きで森永さんの頭を胸に押し付けます。森永さんはそれを良いことに可愛い先っぽと、可愛い反応を充分に堪能します。下の毛で遊んでいた指はいつの間にか腰に回され、自分の腹と江崎くんの腰をすり合わせています。  江崎くんの身体は触れて欲しかった場所を筋肉質な腹でこすられ、跳びはねながら押し付けすりつけて「もっと」とねだります。素直な反応に気を良くした森永さんはコリコリとした感触に育った乳首を丹念になぶりました。 「うぅっ、やっ、あ……」 「やなの? 何がいや? これ?」  森永さんはゆっくりと腰を動かして、ガチガチになって二人の間でよだれを垂らしている江崎くんのちんちんを刺激しました。 「ちがっ……、むねっ、それっ、なめんの、やだっ」 「気持ち良さそうなのに?」 「んっ、なんか、へん、だからっ……りょうほう、やだ」 「わかった。こっちはまた後で……。それでこっちはどうする? どうして欲しい?」  チュポンと音を立てて乳首から唇を離し、色を濃くしたそこにフッと息を吹きかけ、ゆっくりと腰を押し付けて聞きます。 「……」  羞恥に言い淀む江崎くんに「言わなきゃわからないよ?」と返事を促しました。 「……いじわるっ。さっき、触ってって、言ったぁ」 「ん、ごめん、ごめん。ちゃんと言えた江崎にご褒美な」  身体を起こしてうっすら涙さえ浮かべている江崎くんに優しく答えながら、上目遣いに森永さんは身体をずらして頭を下げていきます。そして、 「……はっ、ぁっ、んんっぁ」  勃ち上がった裏側の敏感な筋をためらい無くねぶり、涎を垂らした先端を手のひらを使ってこねました。江崎くんは小さく悲鳴のような声をあげて、その後は甘い吐息をもらしています。 「ちょっ……まっ……ぁっ、まって……」 「なに?」  森永さんは、江崎くんのぬめりを使ってぬるぬると竿を撫で、先端に涎を垂らしてぬめりを足しながら返事をしました。 「すぐイっちゃう……ぅ」 「ん、」  じゃあ、と森永さんが先端を口に含みます。苦い汁を溢れさせる先端を舌先で味わい、唇で裏筋とくびれを刺激します。その間も手の動きは止まりません。楽しむよりも絶頂に追い上げるための行為に、初心者の江崎くんはなす術なく翻弄され苦し気に呻いて直ぐに達してしまいます。  森永さんは震えながら先端が苦くて温かい体液を吐き出し終わっても赦すことなく、体液ごと舌でかき混ぜて残滓を絞り出しました。 「はぁっ……ぁ……、ぁっ……」  荒い息の合間に無意識に発せられる艶っぽい声に煽られてしつこく舐めまわしていた森永さんは「いやぁ」と腰を揺らして言われ、ようやく口を離しました。  江崎くんのちんちんは達しても萎えることを許されず力を取り戻そうとしています。 「気持ち良かった?」  股の間から問われて、江崎くんは息も絶え絶えに頷きました。 「よかった」と呟きながら、森永さんは江崎くんの両足を開いて支え、その間を覗き込みました。そこには、まだ固い窄まりが時折呼吸に合わせてヒクリと身を震わせています。  優しく、したいんだけどな……。  乱暴に感じる程の視覚の刺激に、森永さんはむしゃぶりつきたくなる衝動を我慢しました。 「森永さん……」  少し掠れた声で呟き、森永さんを見下ろしていた江崎くんが両手を広げてハグをねだります。  その甘えたしぐさにギュっと心を掴まれて、いそいそと這い上がりまだ呼吸の整わない身体を抱き締めました。差し出されていた腕が背中に周り、フッと江崎くんが息をつきました。  愛しさに突き動かされてぐりぐりと頭を擦り付けて甘えると、同じように江崎くんも甘えてきて二人で競うように額を擦り付け合ってクスクスと笑い出します。  森永さんは快楽だけじゃない甘さを共有する充足感に陶然としました。一方的じゃなく「求められている」と感じられるその甘さ──。

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