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第20話

 キスがしたくなり顔を上げて江崎くんを覗き込もうとすると、パッと視線を逸らされます。上気した頬が更に赤みを増しあっと言う間に耳まで真っ赤に染まりました。 「江崎」  言外に「キスしたい」と含ませて名前を呼ぶと、顔を背けたままの江崎くんがボソボソと答えます。 「顔、見ないでください……」 「なんで? 顔見たい」 「ちょっ、や、見ないでって」  ムキになる江崎くんの恥じらいに、好意を感じて森永さんは嬉しくなります。  前回はこんな反応しなかったのに……。 「顔、真っ赤……。恥ずかしいの?」  意地悪く聞き覗き込む森永さんに、怒りながら江崎くんが「もうっ、止めてって!」と応戦しました。 「俺のこと意識してんだ? 嬉しいな……」  森永さんは顔が見えないようにもう一度抱き締めて、江崎くんの髪を撫でます。 「なぁ、キスしたい。フェラしちゃったし、嫌ならいいけど……」  森永さんは耳元で気弱にお願いし、そのズルいお願いに江崎くんがしぶしぶ口を開きました。 「……や、じゃない……です」  精一杯の呟きが終わる前に、森永さんは江崎くんの唇を奪いました。  それは軽く触れるだけですぐに離れ、唇に直接愛の言葉を呟きます。 「好き。江崎、大好き」  何度もなんども直接「好き」と吹き込まれて、江崎くんはくすぐったさにイヤイヤと逃げようとしました。 「ほんと、だいすき……」  想いがこもりすぎたそれに心ごと奪われて震え、不意に涙が盛り上がります。  江崎くんが森永さんの背に回した腕に力を入れて抱き付き「おれも……」と呟いた言葉は、そのまま唇に奪われました。  二人して潤んだ瞳のままで夢中で抱き合いキスを交わします。 「ぅ……」  ただ優しく髪を撫でていた森永さんの手はいつしか愛撫になり、深くなっていく口付けにくぐもった音で江崎くんが喘ぎをもらします。 「……はぁっ……」  江崎くんが大きく艶を含んだ息を吐いたのを合図に、唇を離して全身への愛撫を開始しました。  最初はおでこにキスをして、それから頬に、唇の端を濡らしている涎を舐めてから首筋に……。森永さんがキスを落としたり、舐めたり、吸ったりする度に江崎くんは震え、笑い、くすぐったがり、それから甘い声を上げて愛撫を受け止めていきます。  一度精を放った身体は先程よりも余裕をもって、けれど一層敏感になって素直に愛撫を受け入れています。江崎くんは身体だけじゃなく、甘い言葉とキスに心まで溶かされてドロドロと崩れていくような気がして、必死で森永さんに縋ります。 「ぅう……、ぁっ……んっ」  江崎くんはさっきまでの恥じらいを忘れたように、惜しみなく喘ぎ声をこぼしています。  江崎くんは森永さんにグズグズに溶かされ、尻の穴はさっきまでの恥じらいを失ってだらしなく拡がり、森永さんの太い指を咥え込んで「もっと」とねだっています。  息を詰めて勃ち上がったちんちんは先端から涎を垂らし、どこまでも快感を飲み込んでいきそうです。  森永さんは、控えめに色付いて今や快感を増幅するためのスイッチとなった乳首から唇を外しました。 「あっ……」  江崎くんは名残惜し気な不満の喘ぎを上げましたが、すぐに唇を塞がれてそれは満足気な呻きに変わりました。  グラグラと快感に揺れる頭は思考力を放棄して、唇と、充分に蹂躙された胸の先と、小刻みに揺れつつ蠢く指に翻弄されている尻と、その全部の快感だけを追いかけています。  存分に口腔をなぶり我慢が出来なくなった森永さんが大きく息を吐きました。 「入れてもいい?」  欲情を抑えた声で江崎くんに確認します。江崎くんは呆けたままその言葉を聞き、しばらくしてからコクリとうなづきました。そのまま妙に神妙な顔をして森永さんの準備を見守ります。  限界まで張り詰めた森永さんのちんちんはそこだけが別の生き物のようにも見え、だけど森永さんの欲望の中心なんだと江崎くんの本能で理解します。  じっと準備を見守られて気恥ずかしくなった森永さんは、はやる気持ちを抑えて「仕切り直し」と江崎くんの唇にキスをしてから自身を江崎くんのひくつく穴に当てがいました。  充分に解され綻んだ穴は、柔らかく開いて森永さんのちんちんを迎え入れようとしています。  先端を触れさせて息を吐き「入れるよ」と宣言します。  江崎くんは反射的に息を詰め、森永さんも息を詰めて慎重に先端でこじ開けていきます。緊張のためか入口がきゅっと締まり、森永さんは動きを止めます。 「大丈夫、優しくする。大事にするから……」  最後は「入っていい?」と囁いた森永さんに、もう一度江崎くんは頷いて、今度は言葉で答えました。 「入って、俺の中……」  言葉で誘いかけられて、森永さんはゆっくりと江崎くんの中へと自身のちんちんを沈めていきます。  時折「ぅっ……」っと息を張り詰めて見守っていた江崎くんが、動きを止めた森永さんに「入った?」と聞きました。 「入ってるよ」  気持ち良さそうな、抑えた森永さんの声。その声にゾクゾクして、江崎くんは手を伸ばして入っている場所と、入っているものに触れて確認します。  限界まで拡がった穴と、その中に押し込まれた熱くて太い森永さんの欲望の中心。  じわじわとした快感が、身体から心の中まで広がって江崎くんを満たしていきます。 「これ、ぜんぶ? もっとはいる?」 「うん、もっと入る……、もう苦しいだろ。ちょっとずつ、ちょっとずつね……」  そう言って森永さんは小刻みに腰を揺らします。 「うっ……ん……、あっ、あっ……」  その小さな揺れで中の敏感な場所をこすられ、江崎くんの身体の中に一気に快感の成分が広がってゆきます。  大きく足を広げられて正面から抱かれながらゆらゆらと揺さぶられ、江崎くんは『水に浮かぶ木の葉の舟みたいだな』と思いました。引き抜かれる熱さにくらくらして、押し込まれる苦しさに呻きます。『落とされないようにしないと』と森永さんの背中に手を回し、けれど腕は痺れたように感覚が鈍くて必死で縋り付きます。  江崎くんの頭の中はぐしゃぐしゃで、閉じたまぶたの裏はキラキラと光が走り、とりとめのないいくつもの思考が流れてゆきます。 「あぁぁぁっ」  遠くで聞こえるような自分の喘ぎ声。目を開けるとほの明るく照らされている白い天井と森永さん。  ……森永さんだ。  ぎゅっと抱き付くと荒い息の下から「……んっ」と森永さんの声が聞こえて『そうだ、森永さんのちんこ入ってるんだ……』と思い出しました。  思い出した途端に、一気に強い快感の波にさらわれて行きます。  江崎くんは、暗闇に放り出されそうな感覚に怖くなり「もりながさん」と呼びかけました。けれどそれは意味のない快感の音に取って代わられ森永さんの耳には届きません。 「もっ……なが……、あっ、はっ……」  もう一度呼びかけた声はほぼ喘ぎでしたが、森永さんと潤んで焦点の合わない江崎くんの視線が交ざります。森永さんの顔が近付き、口付けられて優しく口腔をまさぐられました。  身体がぴたりとくっついて、二人の間で揺れる江崎くんのちんちんが森永さんの腹筋に強く擦れて「ぅあっ」っと江崎くんがくぐもった叫びを放ちます。触れている場所全てが気持ち良くて『もっと、もっと』と縋り付きました。  森永さんは『優しくゆっくり』と自分に言い聞かせて、激しく打ち付けたくなる衝動と闘っていましたが、江崎くんに求められて動きを止め口付けに専念します。  厚ぼったくて柔らかな唇と弾力のある舌が、触れて、離れて、それから優しく絡まり、ピッタリと吸い付いて江崎くんの舌を吸います。深く、深く口内を探り、お互いの唾液と快感の呻きを直接送り込むと、相手の身体の身体の中に落ちて溶けてしまいそうです。  身体の中の気持ちいい場所を探られるよりも温かい快感にたゆたって、二人は溺れていきました。  慣れない快感に朦朧としている江崎くんがピクリと反応します。  森永さんの腰がゆるく揺れて押し付けられ解放させて欲しいと主張していました。その揺れに合わせて江崎くんの腰も揺れます。  抜き差しせずに良い所をノックされて、身体の内側から気持ち良さがせり上がってきます。 「んん……、はっ、あぁ」  喉の奥が鳴り、苦し気にも聞こえる江崎くんの声がこぼれます。少し、唇を離して、森永さんが言いました。 「ごめんっ、……ちょっと、我慢して、な?」 「え?」と思う間もなく腰を引かれ「熱い」と思った時には、もう激しく腰を打ち付けられました。口付けはそのままで、森永さんの手は江崎くんを追い上げるように江崎くんのちんちんを握って追い上げます。 「あっ、あっ」  江崎くんは「まって」と森永さんを制止することもできずに、濁流にのまれる木の葉の舟のみたいに激しい波に飲み込まれて行きます。  絡められた舌に息が出来ず、江崎くんはイヤイヤをして口への愛撫を拒否しました。腰を激しく打ち付ける規則正しい音と、耐えるような森永さんの息の音が、自分のものとは思えない喘ぎの合間に聞こえてきます。  突き上げる森永さんの手の動きは鈍くてもどかしく、江崎くんは自分の手を重ねて扱き愛撫をねだります。 「はぁんっんんっ……」  江崎くんの口から甘い声が上がり、森永さんがグッと容量を増した気がしました。  イッちゃう! イきたい……!  そう伝えたいのに、喘ぎが邪魔をして言葉を紡ぐことすらできません。 「ぁっ、あぁっ……」  苦しさとあまりの気持ち良さに目元に涙がにじみます。覆い被さった森永さんに「えざき、えざき……」と名前を呼ばれ、もうダメだ、と江崎くんは思いました。何がダメなのかはわからないけど、もうダメ…… 「も、イク……、えざき、イク?」  苦し気な声で告げられ、頷いて答えます。 「あっ、イっキたい、もっ、イキた、いっ……、あっ、もっうっ……」  せきを切ったうわ言のように呻き、もう一度と近付いた森永さんの唇に捕らえられて最後の言葉は、森永さんの中に吸い込まれます。  精を吐き出す身体に、応えるように一際激しく突き上げられて江崎くんは声にならない叫びを上げました。  ビクリと震えながら腰を押し付けられ一番奥深い場所で射精されて、江崎くんは触れていただけなのに立て続けに快感を吐き出しました。

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