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 唇の音が、鼓膜に伝わってくる。  どうでもいい話だけど……俺はこんなこと、誰にもされたことがない。 「や、めろ……っ!」  腕の中で抵抗しても、高遠原は俺を離さない。  俺を弄んでいるのか……まるで、子犬のような舌遣いだ。  舌先で耳を舐められると……唾液の音が、聞こえてくる。 (くすぐったい……っ!)  相手はあの、高遠原美鶴だ。それくらい、ちゃんと分かってる。  ――なのに、俺は。 「ふ、ぁ……っ」  動揺のせいか、うまく抵抗できない。  すると高遠原の手が、俺の体をまさぐり始める。  そしてあろうことか……制服の中に、その大きな手を侵入させてきた。 「なっ、にして……っ! ゃ、だ……っ!」  ――かと、思うと。 「――ひ、ぁ……んっ!」  なにを思ったのか、男の……しかも、コイツにとって大嫌いな俺の乳首を。  ――つねって、きたのだ。 「冗談、キツイ……っ! やめ――あ、っ!」  話がしたいなら、いっそ抱き締めたままでいいからサッサと終わらせたらいい。  なのに何でコイツは……俺の体を触り始めたんだ? 「やっ、やだ――ん、っ!」  まるで、女の乳首でも弄るような手つき。  俺は自分でそんなところ……弄ったことなんか、ない。  なのに、俺は乳首と同時に耳も攻められ……望んじゃいないのに、声が出てしまう。 「真冬……ッ」 「ゃ、め――ば、ぁ……ひ、っ!」  ――この状況は、どう考えてもおかしい。  ――なのに、どうして俺は……っ!   (何で、こんな……っ!)  ――大嫌いな高遠原相手に、抵抗の一つもできないんだ……っ! 「おね、がい、だから……っ! も、やめ……ん、っ!」  体に、力が入らない。  腰の辺りがゾクゾクして、足が震える。  目的は分からないが、高遠原は俺に……小さな快感を与え続けた。  すると、高遠原は次の段階に踏み出す。 「――っ! おいっ、高遠原っ! どこに――んぁっ!」  制服の、ズボン。  そのチャックを下ろし、下着の中に手を入れてくる。  俺は当然、慌てて後ろを振り返った。 「お前、正気じゃないぞっ! 何をやってるか――」 「分かってるに決まってんだろ。バカにするなよ」  そう言うと同時に。  ――高遠原は……俺のペニスを、扱いてきた。 「――や、あっ! んんっ!」  乳首と耳を攻められていたからか、どうやら俺のペニスは既に濡れていたらしい。  その証拠に……高遠原が俺のを扱くと、クチュクチュといういやらしい音が聞こえてくる。  卑猥な音が聞こえるせいで、俺は余計に……反応してしまう。 「俺様に弄られて、感じてるのかよ?」 「ち、ちがう……っ! こんなの、生理現象――ん、あっ!」 「『生理現象』ねェ? ならお前、自分で弄ってもこんだけ体ビクビクさせてんのかよ? 忙しねェなァ?」  耳元で、高遠原が笑う。 「ふぁ……あ、ぁ……っ! み、耳元……やめ、て、ぇ……っ!」  ――俺はいったい、なにをされているのだろう。  ――この男の目的は、何なんだ……っ? (いやだ……っ!)  頭では、そう思っているのに。  体はまったく、動いてくれなかった。

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