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 指による圧迫感がなくなり、俺は慌てて酸素を吸い込んだ。 「はぁ……っ、はっ」  未だに現状を理解していない頭で、ぼんやりと考える。 (満足……した、のか?)  散々いやがったから、もしかしたらやっと興ざめしたのかもしれない。  だが。 「た、高遠原……っ? な、なにかが……当たって、る……っ」  解放された。  そう思ったのも、束の間。  ――高遠原はヤッパリ、優しい男なんかじゃなかった。 「――真冬、挿れるぞ」  ――なにを。  そう訊ねる時間は、与えられなかった。 「――あっ、ぁああ……っ!」  尻の穴に、押しつけられていた熱いモノ。  硬くて、指よりも明らかに、太い。  それでいて……容赦なく内側に侵入してくる、熱の塊。  その正体は……言われなくたって、すぐに分かった。 「いや、だ……っ! やだ、やだぁ……っ!」  ――高遠原の、性器だ。 「く……ッ! さすが、処女だな……ッ!」  ワケのわからない感想をぼやきながら、高遠原が腰を落としていく。  ずぶずぶと、熱いモノが俺を犯していく感覚。  これを『最悪』と言わずに、何て言えばいいんだろう。 「あっ、あぁ……っ!」  初めての行為に、体はしっかりと【拒絶】を示した。  筋肉が強張り、血の気は引き、浅い呼吸しかできない。 「ひ、っ! あ、は……ぅ、っ」  無理もないだろう。  そもそも高遠原がペニスを突っ込んでいる部位は、男の性器を受け入れる為の器官じゃないのだから。 「おお、き――ん、ぅ……っ!」  受け入れようとする態勢を一切とらず。  体は激しく、抵抗を示し続ける。  が、普段の強引な高遠原からは想像もできない、ゆっくりとした挿入。  それにより、受け入れざるをえなかった。 「はぁっ、は、ぁ……っ!」  ――異物感が、強い。  ――怖いし、気持ち悪くて堪らない。 (俺、今……高遠原に、犯されてるんだ……っ!)  気付きたくも、わかりたくもないのに。  どこかで冷静な自分が、勝手に考えてしまう。  ――俺は今、世界で一番嫌いな男……高遠原美鶴に、犯されているのだと。 「頑張ったな、真冬? ちゃんと、根本まで挿入できた……ッ」  戸惑い、怯え、嫌悪している俺とは対照的に。  高遠原はなぜか、満足そうだ。  そもそも、嫌いとか嫌いじゃない以前に……男の俺が、男の高遠原に抱かれているんだぞ?  ――こんな屈辱が、あってたまるものか……っ!  だけど……そうは思っても、動けないのが現状だ。 「ぬ、抜いて……くれ、っ。こ、こんなの……おかしい、っ」  至極当然の主張を、俺はかざす。  ――だが……高遠原が、俺を相手に遠慮や配慮をする筈がなかった。

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