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まるで、じゃれ合っているかのようなやり取り。
枕で叩かれている高遠原は、なぜかご機嫌だった。
「ハハッ! そんなに赤くなるなよ」
「なってないっ! お前の目は節穴か、ばかっ!」
「冗談なんて言ってないぜ? なんなら、鏡でも見るか?」
「死ねっ! お前なんて……っ!」
からかい続ける高遠原の顔目掛けて。
「――お前なんか、嫌いだっ! 世界で一番っ、大嫌いだっ!」
枕を、力一杯振り下ろした。
見え見えの攻撃に、高遠原は腕でガード体勢を取る。
防がれてしまったのが面白くない俺は、すぐに枕を振り上げた。
その、僅かな隙間から。
「……ッ」
見たことのない表情が、見えてしまった。
その表情を見た、瞬間。
(な、んで……っ)
一瞬だけ、息が詰まって。
胸に、覚えのない痛みが走った。
いきなり始まったセックスで忘れかけていたが、高遠原は爆弾みたいな告白をしてきたんだ。
――小さい頃の裏切りは、俺のことが……好きだったから。
――嫉妬心からの、行動だったと。
まとめると、高遠原はそう告白してきた。
(でも、だからって……っ)
それが本当のことだったとしても、だ。
俺は、高遠原を許すなんて……。
「真冬」
小さな胸の痛みに気を取られていると、不意に……名前を呼ばれた。
思わず、素直に高遠原の方へ顔を向けてしまう。
「え、っ」
頬に、手を添えられた。
そしてそのまま……唇を、重ねられる。
「ん……っ」
恋人にするような、優しい。
甘い、キス。
「今度は、抵抗しないんだな」
触れる程度のキスから俺を解放して、高遠原は呟く。
自嘲するような笑みを、浮かべながら。
(何でお前が、傷ついたような顔するんだよ……っ)
被害者は、俺だ。
裏切られて、冷たくされて、レイプまがいのことをされたのは……俺だぞ?
「……お前なんか、嫌いだ」
「あぁ」
「大嫌いだ……っ」
「知ってるっつの」
俺の気持ちに、高遠原は相づちを打つ。
もしも……本当に、俺のことが好きだったとしても。
だからって……俺は高遠原を許せるわけ、ない。
(徹以外の友達が離れて……俺がどれだけ、苦しかったか……っ)
寂しい気持ちを味わい続けた、子供時代。
別に、いじめではなかったけれど。
それでも……友達がいなくなったのは、寂しかった。
「そうだ」
突然思い出したかのように、高遠原がポツリと呟く。
「お前、メチャクチャぐっすり寝てたんだぜ? 今何時かわかってるか?」
高遠原の言葉にハッとし、俺は慌てて時計を探す。
「……十二時、半……っ?」
「そう。日付変わっちまったぞ」
「かっ、帰る……っ!」
腰の痛みを抱えつつ、俺はベッドから下りようと動いた。
すると。
「そういう意味じゃねェよ」
離れた俺を、高遠原が無理矢理引き寄せた。
突然のことでバランスを崩した俺は、高遠原の広い胸に、埋まってしまう。
「は、離せよっ! 俺は――」
「俺様に逆らえる立場?」
「ぐ……っ」
逆らったらきっと、さっきまでの恥ずかしいやり取りをバラされる。
俺は思わず、唇を噛んだ。
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