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露骨に悔しそうな顔をしている俺を見て、高遠原は笑う。
「お前、ほんッと……可愛いなァ」
俺の腕を掴んでいた手が、今度は頭を撫で始める。
そうしながら、高遠原が耳元で囁いたのだ。
(何なんだよ、これ……っ)
高遠原のしたいことが、まったくわからない。
――俺のことが好きだから、頭を撫でているのか?
――それともヤッパリ俺のことが嫌いだから、ばかにしてるんだよな?
「このままもう一回ヤるのもいいかもなァ?」
「ヤったら殺すからなっ!」
「とまぁ、拒否するってのは分かってたけど」
高遠原が俺の頭から手を離す。
「お前は熟睡してたけど、俺様は眠いんだよ。だから、ホラ。このまま寝るぞ」
そしてまた、俺の腕を掴んできた。
俺をベッドに倒そうとしている力に、俺は必死の抵抗を示す。
「何で俺がお前に添い寝しなくちゃならないんだよっ! 一人で――」
「逆らうのか? ふゥん?」
「お前、本当にマジで最悪……っ!」
諦めて、俺はベッドに倒れ込む。
すぐ横に、高遠原の顔がある。
「……いつ以来だろうな。こうやって、隣にお前がいるの」
「忘れた。……サッサと寝ろよ」
「ツレねェな」
不意に、高遠原が俺の耳に息を吹きかけた。
小さく身じろぐと、高遠原はニヤリと笑う。
「俺様は二回戦目も余裕だぜ?」
「シないっ! 早く寝ろっ!」
高遠原に背を向けて、俺は毛布に顔まで潜り込む。
このまま、高遠原と一緒にいるのはいやだ。
胸がザワついて、平常心でいられないから。
(嫌いだ、大嫌いだ……っ)
いつもそうだった。
高遠原のこととなると、すぐにこう。
(『好き』とか、ワケのわかんないこと言うなよ……っ!)
――俺は、平静を保てなくなる。
結果的に感じてしまったとしても、レイプまがいのことをされたのには変わりない。
だから、俺は……高遠原が、嫌いだ。
(こんな奴……大嫌い、なんだ……っ!)
今すぐに、コイツから離れたい。
帰りたくて、仕方ない。
だが、弱味を握られている。
(朝になったら、すぐに逃げてやる……っ)
そう決心したときにはもう、雨の音は聞こえなくなっていた。
余談だが、翌日の朝。
「お前の命令通り、一緒に寝た! だから、もういいだろ! 帰る!」
「んァ? ……オイ、真ふ――」
「追いかけてくるなよっ!」
寝起きの高遠原から逃げるように、俺はすぐさま部屋から逃げ出した。
2話・無理矢理が好き 了
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