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 高遠原の親は、金曜日だけ家に不在。  仕事の関係でそうらしい。それは、子供の頃からずっと。  だから俺は……毎週金曜日、高遠原の家に呼ばれた。  高遠原に脅されるようになって、二ヶ月後。  学校では接点がないのに、俺は毎週金曜日だけ……決まって、高遠原の家に向かった。  フェラしたり、抱かれたり、キスされたり。  今日だって、そうだ。 「お前、マジで……最悪だ、っ」  二回も中出しされた俺は、ベッドの上で悪態を吐いた。  こんな関係を続けているせいか。最近は、自分から高遠原に話しかけることも増えてしまった。 「ちゃっかり楽しんだクセに、減らず口を叩くのは相変わらずだな」 「最近、どうやってお前を殺してやろうかって考えてる……っ」 「ハハッ! それはイイな! 俺様のことだけ考えて生活してろ」  そして前よりも……高遠原のことを考える回数が多くなった、気がする。  ――いつか、絶対に仕返しをしてやりたい。  ――俺だけこんな、敗北感を味わうなんてごめんだ。  でも。 「……何だよ、ジロジロ見て」 「いや? 可愛いな、と思ってな?」 「……お前のそれ、聞き飽きた」  目が合ったから睨んだのに、高遠原は笑顔だ。  ……こういうことを言われると、どう返していいのか分からない。  頭が一瞬……ほわぁんとなって、胸の辺りがムズムズする。  その後に、慌ててハッとして平静さを取り戻す。 「何だよ、照れるなって」 「照れてない」 「顔が赤いぜ?」 「こ、れは……。疲れたから、ただの酸素不足」  ――顔が、赤い? (高遠原に『可愛い』って言われたから?)  そんな理由で、赤くなるとでも?  ――そんなの、絶対にありえない。 「真冬」  二人きりになると、高遠原は俺のことを下の名前で呼ぶ。  ひどく、優しい声で。 「なに――」  振り返るとなにをされるかは、分かっている。 「ん、っ」  キスだ。  啄むような優しいキスの後、舌を入れられる。  逃げようとしても、舌を絡めるよう強要されて……従ってしまう。 「ん、っ。……ぁ、んん……っ」  高遠原は、キスが上手い。  これだけ整った容姿だ。今まで、数え切れないくらいの恋人がいたに違いない。  それは、キスも上手になるくらい。 (俺のこと、本当に好きなのかよ……っ)  高遠原のことを考えていると、もやもやする。  俺のことを『好き』って言ったくせに……『付き合え』とは言わない。  今までと変わらず女子と話している。  そもそも……子供の頃から俺が好きだったなら、何で恋人なんか作るんだよ。 (ムカつく……)  キスから解放されて、俺は高遠原の胸を押す。  不可解で、不愉快な感情。 (俺のこと……本当は、どう思ってるんだよ……っ)  知りたくないのに、知りたい。  好きって言われたくないのに、そうじゃないような対応をされるとムカつく。  そして俺は……更に、高遠原を嫌いになるんだ。 3話・振り回すのが好き 了

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