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 そして、放課後でのこと。 「何で、俺が……っ」  またもや寝ていることが先生にバレてしまい、罰を与えられた。  授業中に寝てしまった原因は、自分が一番よく分かってる。  ……最近、よく眠れないんだ。  頭でずっと、高遠原の真意について考えているから。  そしてそのせいか、夢見が悪い。 (だからって……何で罰が、旧体育倉庫の掃除なんだよ……。これも全部、高遠原のせいだ……っ!)  こんなことなら休み時間にでも寝ておくんだった。それか、保健室にでも行けば良かったかもしれない。  そもそも、旧体育倉庫の掃除なんて……運動部の生徒に頼めばいいとも思う。 (まぁ、授業中に寝た俺が悪いけど……)  俺が向かっている体育倉庫は【旧】なだけあって、物が乱雑に置かれている。  つまり、とても荒れているのだ。……おそらく、先生も掃除をしたくなかったのだろう。  結果的には、押しつけられた……ということだ。 (高遠原め……っ!)  罰とはいえ、頼まれたからにはやるしかない。  そうとは分かっているが、どうしても納得できないのだ。怒りの矛先を高遠原に向けるほど。  旧体育倉庫に入り、中を見回す。  カゴから出て、落ちたボール。  重ねて置けばいいのに、バラバラになっている用具。 (ジャージに着替えておいて正解だった)  掃除を始めようと、ボールを掴む。  そのとき……聞き覚えのない声が、倉庫の中に響いた。 「きみが、諸星くん?」  知らない声は突然、俺の名前を呼んだ。 (……誰だ?)  知らない、男。  しかも、一人じゃない。  三人の男が、倉庫の前に立っている。 「やぁ、諸星くん」  ニヤニヤと笑う、男たち。  おそらく、先輩だろう。もちろん、三人とも知らない人だが。 「諸星、ですけど……?」  もしかして、この人たちも罰を与えられたのだろうか。  だとしたら心強い。さすがに一人でここの掃除は大変だからな。  妙な親近感を抱いたのは……束の間だった。 「へぇ、可愛い顔してるじゃないですか?」  後ろにいた二人目の男が、俺の顔をジッと見つめてくる。  何だか最近、やたらと『可愛い』って聞くな。流行ってるのか?  よく分からないが、きっと不真面目な生徒なのだろう。掃除をしたくないから雑談を振ってきている……といったところか? 「えっと……罰で掃除を頼まれた、んですよね?」 「いや、違うけど」 「えっ」  どうやら仲間じゃなかったらしい。  一人目の男が俺に近寄り、距離をぐっと詰めてくる。 (……な、んか……変な、感じ……っ)  ――いやな予感がした。  そして、それはすぐに。 「――お前、ホモなんだろ?」  ――的中した。

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