39 / 83

4 : 7

 手元に置いておきたくて。  自分だけのモノにしておきたい。  そんな、オモチャ。  高遠原にとっての俺なんて、その程度だったんだ。  子供の頃も、そう。  ――そして、今だって。 「……ッ? オイ、真冬。お前、なにしようとしてんだよ」  俺はその場にしゃがみこむ。  そして、高遠原のズボンに手をかけ……チャックを、下げた。 「こういうことさせるために呼んだんだろ? だったら、役目を果たすだけだ」 「そんなこと、今はいい。……それより、誰にやられたのかを早く答えろ」  自分のオモチャを勝手に使った犯人を探す。  つくづく、子供っぽい。俺が思っている以上に、高遠原は独占欲が強いらしい。 「言っただろ。倉庫の掃除をしてたら、用具が落ちてきたって」 「その程度でこんなになるワケねェだろ。……俺様をバカにしてるのか?」 「まさか。俺が高遠原様をバカにするわけないだろ」  俺はただのオモチャじゃない。人間だ。  感情くらいある。 「サッサと済ませよう。今日は早く寝たい」 「おい、真冬――」 「ちゃんと奉仕したら、言わないでくれるんだもんな?」  そう言って、思わず自嘲の笑みを浮かべた。 「まぁ、もうバラしたんだろうけど」 「……ハァ?」  昨日、俺に暴行を加えた先輩は確かに言っていた。 『――キスとか、それ以上のこともしてるんだって?』  そして、先輩たちは高遠原の知り合い。  ここまで揃っていたら、答えは一つだけだろう? 「無駄だって分かってたけどな。お前、子供の頃からずっと同じなんだもん。俺のお願い聞いてくれたことなんて、一度もなかったよな」 「……何の話だよ」 「今更隠さなくたっていいだろ?」  顔を上げて、微笑んでみせる。 「他の奴に『諸星真冬がホモだ』って……言いふらしたんだろ?」 「……は、ッ?」  まるで、心当たりがないかのように。  高遠原は両目を見開いて、驚き始めた。  そんな姿を見て、もしかしてと……俺はある可能性を口にする。 「もしかして……俺に知られるとは思ってなかったのか?」  きっと今の俺は、あまりにも……性格が、悪い。  高遠原は嘘を吐いたり、からかってきたり、酷いことだってする。  だけど、こんな卑劣なことはしないと思いたかった。 『……ガキの頃の話、だけどよ。……お前には、悪いことをしたと……思ってる』 『俺様がしたことは、お前に嫌われても……まァ、仕方がないことだろうなと、思ってる』  改心してくれたんだって、信じたかったんだ。  なのに。 「誰が、そんなこと……言ってた?」  高遠原の返事は、俺の求めていたものとは違った。

ともだちにシェアしよう!