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手元に置いておきたくて。
自分だけのモノにしておきたい。
そんな、オモチャ。
高遠原にとっての俺なんて、その程度だったんだ。
子供の頃も、そう。
――そして、今だって。
「……ッ? オイ、真冬。お前、なにしようとしてんだよ」
俺はその場にしゃがみこむ。
そして、高遠原のズボンに手をかけ……チャックを、下げた。
「こういうことさせるために呼んだんだろ? だったら、役目を果たすだけだ」
「そんなこと、今はいい。……それより、誰にやられたのかを早く答えろ」
自分のオモチャを勝手に使った犯人を探す。
つくづく、子供っぽい。俺が思っている以上に、高遠原は独占欲が強いらしい。
「言っただろ。倉庫の掃除をしてたら、用具が落ちてきたって」
「その程度でこんなになるワケねェだろ。……俺様をバカにしてるのか?」
「まさか。俺が高遠原様をバカにするわけないだろ」
俺はただのオモチャじゃない。人間だ。
感情くらいある。
「サッサと済ませよう。今日は早く寝たい」
「おい、真冬――」
「ちゃんと奉仕したら、言わないでくれるんだもんな?」
そう言って、思わず自嘲の笑みを浮かべた。
「まぁ、もうバラしたんだろうけど」
「……ハァ?」
昨日、俺に暴行を加えた先輩は確かに言っていた。
『――キスとか、それ以上のこともしてるんだって?』
そして、先輩たちは高遠原の知り合い。
ここまで揃っていたら、答えは一つだけだろう?
「無駄だって分かってたけどな。お前、子供の頃からずっと同じなんだもん。俺のお願い聞いてくれたことなんて、一度もなかったよな」
「……何の話だよ」
「今更隠さなくたっていいだろ?」
顔を上げて、微笑んでみせる。
「他の奴に『諸星真冬がホモだ』って……言いふらしたんだろ?」
「……は、ッ?」
まるで、心当たりがないかのように。
高遠原は両目を見開いて、驚き始めた。
そんな姿を見て、もしかしてと……俺はある可能性を口にする。
「もしかして……俺に知られるとは思ってなかったのか?」
きっと今の俺は、あまりにも……性格が、悪い。
高遠原は嘘を吐いたり、からかってきたり、酷いことだってする。
だけど、こんな卑劣なことはしないと思いたかった。
『……ガキの頃の話、だけどよ。……お前には、悪いことをしたと……思ってる』
『俺様がしたことは、お前に嫌われても……まァ、仕方がないことだろうなと、思ってる』
改心してくれたんだって、信じたかったんだ。
なのに。
「誰が、そんなこと……言ってた?」
高遠原の返事は、俺の求めていたものとは違った。
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