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心のどこかでは、期待していたのかもしれない。
――高遠原が、バラしたんじゃないって。
だけど、違った。
(否定、しないんだ……)
高遠原が、誰かにこの関係を言うはずない。
約束を、守ってくれるはずだって。
――信じたかった。
「……ヤッパリ、そう、だったんだ……っ」
ポタッ、と。
なにかが床に、こぼれた。
それがいったい何なのか……俺はすぐに気付く。
「……っ」
泣いている場合じゃ、ない。
なのにどうして、涙ってものは……一度出てしまうと、なかなか止まってくれないんだろう。
慌てて俯いてみるが、高遠原は気付いてしまったらしい。
「……真冬? お前、何で泣いてんだよ。 ……なァ、真冬」
『何で』って?
俺がどうして泣いているのか、知りたいのかよ?
俺のこと、オモチャかなにかだと思ってるくせに?
(俺はずっと、お前のこと……っ)
子供の頃。
変な噂を流されて、傷ついた。
それからずっと、謝ってくれたらよかったのにって……そんなことばかり。
なにかあると、すぐに高遠原のことを考えた。そしてすぐに、嫌いだと言い訳をして、目を背けて。
でも、今からはちゃんと……認めるよ。
(俺は、ずっと。……美鶴と、友達に戻りたかったんだ……っ)
『好き』って言われて、嬉しかった。
美鶴の気持ちは、正直よく分かんなかったけど。でも、友達に戻れる可能性があったってことだろう? だから、嬉しかったんだ。
美鶴が俺を『好きだ』って言うんなら、もっとちゃんと……時間をかけてでも許すから、本当のことを全部話してほしかった。
子供の頃からワガママで、自分勝手だったけど……俺は、そんな美鶴と一緒にいるのが、一番楽しかったから。
「なんっ、でも……ない……っ」
俺の知らない女子たちといるのは、見ていて楽しくなかった。
だけど、美鶴は俺のことを嫌いなんだと思ってたから……飲み込んだ。
――きっと俺は、知らない間に美鶴を傷つけた。
――だから変な噂を流されて、孤立させられたんだ。
――俺はちゃんと、謝るよ。
――だから美鶴もちゃんと、謝ってくれよ。
「ごめん、ごめん……っ。すぐ、泣き止むから……ご、めん……っ」
ずっとずっと、美鶴のことを信じていたかったんだ。
どこかで俺は、間違えた。だけど、俺の一番大事な友達は……美鶴だったんだぞ。
でも、もう。
――お前に、なにができるのか分からないよ。
「なにが、不満だったんだよ……っ? 俺、ヤッパリ……下手、だったのか……っ?」
子供の頃に裏切られたのは、きっと俺のせい。そう思って、小さい頃は自分を責めて……美鶴の為に、美鶴を嫌おうとした。
高校生になって、美鶴と関係を持って……美鶴が気持ちを、伝えてくれて。頑張れば、友達に戻れるかもしれない。俺だって、美鶴のことが親友として大好きだったんだから。そう思って、いたのかもしれない。
――だけどもう、無理だよ。
――俺とお前はもう、友達なんかには戻れないんだ。
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