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 目元をグシグシとこすりながら、俺は嗚咽交じりに言葉をぶつける。 「俺、お前と友達に戻りたくて……っ。セックスは、何でこうなったのか、わかんないけど……でも、お前が俺を『好き』って言ってくれたから……お前が、バラすって脅してきたし、だから……頑張った、つもりだったんだ……っ」 「おい、真冬……ッ」 「俺のこと、嫌いなのは分かってる……っ! でも、俺は、俺なりにけっこう頑張ったんだぞ……っ? だから、ちょっとずつ、お前と――」 「真冬ッ!」  美鶴の、怒鳴り声。  思わず、ビクリと震えてしまう。 「もう一度訊く。……誰にやられた? 誰に、何て言われた? 答えろよ、真冬……ッ」  何で、こうなっちゃったんだろう。  美鶴にとって、俺は。  ――最後まで、所有物でしかいられなかった。 「……美鶴」  涙で濡れた瞳。  だけど、しっかりと美鶴を見上げる。 「今日で、最後にしよう」  立ち上がって、俺は。 「真ふ――ん、ッ」  初めて、自分から。  美鶴に……キスをした。 「体の痕は、本当に、ぶつけただけだから。……それで、昨日、たまたま『諸星真冬は高遠原美鶴の家に泊まって、エロいことしてるホモ』って、聞いただけ」  唇を離して、必死に笑顔をつくってみる。  所有物を傷つけられた怒りでか……美鶴の手は、震えていた。  そんな、震えている手に……俺は自身の手を重ねる。 「な? これが、真相」  寂しいとき、美鶴がそばにいてくれたら。……そう、何度も考えた。  両親がいなくて、徹には心配をかけたくなくて。  昨日のことだって、美鶴になら、話してもよかったかもしれない。  だけど。 (相談する意味なんか、ないんだよな……)  美鶴はあの先輩たちに、俺のことを話した。  その結果、あの先輩たちがしたことに腹を立てているけど……そこらへんの事情は、よくわからない。 (もしかしたらあの人たちは、美鶴のことを嫌っているのかもしれないな)  だから、美鶴が大事にしている俺というオモチャで遊びたかった。  そして、美鶴を怒らせたかったんだろう。  美鶴は俺のことをバラせて、先輩たちは美鶴になにかの仕返しができて。  もう、全部、十分だろう。 (俺も、美鶴のこと……友達だって、信じたかったんだって。……そう、気付けたから……もう、いい)  人を嫌うことは、すごく疲れる。  だからもう……美鶴のことは、忘れたい。 「真冬……ッ」  美鶴が俺を、強く抱き締める。  痛いのと、嬉しいのと、悲しいので。頭がいっぱいになった。 「『――これは、お前がしたことの報いだ』」  頼まれたことを、伝えておこう。  これでもう、俺たちを繋ぐものはなにもないんだから。

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