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5話 : 監視するのが好き 1
月曜日の朝。
それは突然……前触れもなく、始まった。
「お、おはよう……真冬」
徹が家の前で、俺を待っていたのだ。
……先に言っておくが、前触れもなく始まったのはこのことではない。
だが、これにも驚いたので……俺は徹をジッと見上げた。
「……え、何で?」
「その反応はシンプルに酷いぞ!」
いつもの徹がしそうな反応を返してくる。どうやら、本物の徹らしい。
それでも胡乱気にジッと見つめていると、徹が両手をブンブンと盛大に振り始めた。
「いやいや! つぅか真冬! それどころじゃねぇんだって!」
すると、徹は俺の肩に腕を回す。
そのまま、誰がいるわけでもないのに小声で話しかけてきた。
「なぁ、いったいなにがあったんだ?」
「……え?」
「美鶴だよ……!」
思わず、ぎくりとする。
(まさか、徹にも美鶴とのことがバレたのか……?)
美鶴との関係は、先週の金曜日に終わらせたつもりだ。
だが、今までのことは本当にあったこと。どう言い訳したって、それは隠し通せない。
(ま、まさか、それとも……! 美鶴、ついに俺から徹のことを……?)
徹すらも奪われたら、俺はどうしていいのか分からないのに……っ!
いやなことばかり、必死に考える。
だが、徹の口から飛び出てきたのは……予想外のことだった。
「――何で美鶴の奴……いきなり『俺様も一緒に登校する』って言い出したんだ?」
「……へ?」
……徹は、なにを言っているんだ?
そんなの、俺だって初耳な話だぞ?
「「……え?」」
二人で顔を見合わせて、間抜けな声をハモらせる。
すると、話題の人物が姿を現した。
「よう、諸星。……それと、秋葉」
後ろから名前を呼ばれて、思わず二人で硬直してしまう。
「……こ、この声」
「た、高遠原美鶴……っ」
俺と徹は、恐る恐る後ろを振り返った。
「朝から、お前たちは随分と仲がいいんだな」
ほんのりと眠たげな表情。それでいて、気怠く低い声。
だが、端整な顔立ちはそのまま。誰もが見惚れる男が、そこには立っている。
しかし、俺と徹は……心を一つにした。
「「((もしかして、怒ってる?))」」
俺たち二人の気持ちが、完全にシンクロする。
俺たちは美鶴から顔を背け、ヒソヒソと打ち合わせを始めた。
「真冬、どうにかしろ!」
「な、何で俺が……! って言うか、俺は先週完璧にアイツと縁を切ったんだぞ……っ!」
「先週の間になにがあったんだよ! って、そういうツッコミは置いとく! とにかく、真冬じゃないと駄目なんだよ! さっきの挨拶聞いただろ? 俺の圧倒的オマケ感!」
「理由になってるようでなってない!」
ボソボソと打ち合わせをするが、なにも解決しない。
何でだ。どうしてこうなった。
俺は先週、ハッキリと美鶴にサヨウナラを告げたはずなのに。
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