43 / 83

5話 : 監視するのが好き 1

 月曜日の朝。  それは突然……前触れもなく、始まった。 「お、おはよう……真冬」  徹が家の前で、俺を待っていたのだ。  ……先に言っておくが、前触れもなく始まったのはこのことではない。  だが、これにも驚いたので……俺は徹をジッと見上げた。 「……え、何で?」 「その反応はシンプルに酷いぞ!」  いつもの徹がしそうな反応を返してくる。どうやら、本物の徹らしい。  それでも胡乱気にジッと見つめていると、徹が両手をブンブンと盛大に振り始めた。 「いやいや! つぅか真冬! それどころじゃねぇんだって!」  すると、徹は俺の肩に腕を回す。  そのまま、誰がいるわけでもないのに小声で話しかけてきた。 「なぁ、いったいなにがあったんだ?」 「……え?」 「美鶴だよ……!」  思わず、ぎくりとする。 (まさか、徹にも美鶴とのことがバレたのか……?)  美鶴との関係は、先週の金曜日に終わらせたつもりだ。  だが、今までのことは本当にあったこと。どう言い訳したって、それは隠し通せない。 (ま、まさか、それとも……! 美鶴、ついに俺から徹のことを……?)  徹すらも奪われたら、俺はどうしていいのか分からないのに……っ!  いやなことばかり、必死に考える。  だが、徹の口から飛び出てきたのは……予想外のことだった。 「――何で美鶴の奴……いきなり『俺様も一緒に登校する』って言い出したんだ?」 「……へ?」  ……徹は、なにを言っているんだ?  そんなの、俺だって初耳な話だぞ? 「「……え?」」  二人で顔を見合わせて、間抜けな声をハモらせる。  すると、話題の人物が姿を現した。 「よう、諸星。……それと、秋葉」  後ろから名前を呼ばれて、思わず二人で硬直してしまう。 「……こ、この声」 「た、高遠原美鶴……っ」  俺と徹は、恐る恐る後ろを振り返った。 「朝から、お前たちは随分と仲がいいんだな」  ほんのりと眠たげな表情。それでいて、気怠く低い声。  だが、端整な顔立ちはそのまま。誰もが見惚れる男が、そこには立っている。  しかし、俺と徹は……心を一つにした。 「「((もしかして、怒ってる?))」」  俺たち二人の気持ちが、完全にシンクロする。  俺たちは美鶴から顔を背け、ヒソヒソと打ち合わせを始めた。 「真冬、どうにかしろ!」 「な、何で俺が……! って言うか、俺は先週完璧にアイツと縁を切ったんだぞ……っ!」 「先週の間になにがあったんだよ! って、そういうツッコミは置いとく! とにかく、真冬じゃないと駄目なんだよ! さっきの挨拶聞いただろ? 俺の圧倒的オマケ感!」 「理由になってるようでなってない!」  ボソボソと打ち合わせをするが、なにも解決しない。  何でだ。どうしてこうなった。  俺は先週、ハッキリと美鶴にサヨウナラを告げたはずなのに。

ともだちにシェアしよう!