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美鶴が加わって、三人で過ごすことが当たり前になってきた。
そう思うようになってから、すぐのこと
「明日からはつるまない」
俺様で暴君な高遠原美鶴は、不遜な態度でそう言い放った。
「唐突すぎるだろ、お前さん」
徹が俺の弁当の玉子焼きを盗んで、美鶴を非難した後に頬張る。
確かに、美鶴は唐突すぎると思う。
いきなり一緒に行動し始めたかと思えば、今度は突然俺たちから離れるだなんて。
(……まぁ、別に、いいけど……)
美鶴がいないのなんて、普通だ。むしろ、小学校のあの噂話以来、美鶴がいないことこそ通常だったんだから。
(なのに何で、俺はちょっとだけ……モヤモヤっとしてるんだろう)
何だか、最近の俺は変だ。
なにを言っていいのか分からず口を閉ざしていると、美鶴が突然。
「オイ」
徹の手を掴んだ。
そのまま美鶴は、徹相手に睨みをきかせる。
「俺様の諸星から、なに勝手にオカズ奪ってんだよ」
……ん?
思わず、顔を上げた。
美鶴は徹の腕を掴んだまま、不機嫌そうだ。
だけど徹は、全然驚いていない。むしろ『どんとこい、こういうの大好き』って顔してる。……何でだ?
「いやいや。真冬はお前のじゃねーじゃん?」
「俺様のだ」
「うっわ、重たくね? 俺、そういう重いのってどうかと思うけどな~? でも、見てる分にはサイッコーに面白い!」
「俺様はお前を見ていたら最悪の気分だがな」
何故だか美鶴は、徹が俺にちょっかいをかけると不機嫌になる。
そして、意味不明なことを言うんだ。
(玉子焼きくらい、欲しいならやるのに……?)
自分のモノ扱いされるのは、複雑な気持ちだけど。
オカズ一つで喧嘩を吹っ掛けるのは、どうかと思う。
「美鶴」
「ンだよ」
絶賛ご立腹中の美鶴が、俺を見る。
俺は弁当箱に入っている玉子焼きを箸でつまんで、美鶴の口元に持っていった。
「玉子焼きの権利を主張するくらいなら、食べたいって素直に言えよな」
何ともないように、差し出してみたものの。
(どっ、どど、どうしたんだ、俺……? 何でこんなことしてるんだ?)
内心、パニック寸前だ。
(美味しくなかったらどうしよう……そもそも、食べてもらえなかったら? っていうかまず、何で俺は美鶴の横暴を無視しないで律儀に対応してるんだ? 美鶴と俺は友達じゃないんだぞ……っ!)
徹相手とは違う、変な緊張。
しかも、グルグルといやなことばかりが頭をよぎる。
だがそんなこと、美鶴には関係ない。
「言わなくても察しろ」
俺の心配なんて、気にせずに。
あまりにも自然に、美鶴は……俺の玉子焼きを、食べた。
「……お前って、本当に……ワケ、わかんねぇ」
徹がニヤニヤしているのは、見なかったことにしよう。
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