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 詰められた距離が、開く。  美鶴が俺を、腕の中から解放したからだ。 「美鶴……っ?」  不安から、声が震えた。  そんな俺が、見上げた先にいるのは。 「――好きだ」  茶化す様子もなく、嘘を吐いている様子もない。  真剣な……幼馴染みだった。 「真冬のことが、好きだ。ガキの頃から、ずっと。誰にも渡したくなかったし、今だって渡したくねェ。変わらず、お前にどう接していいのか分かんねェけど……今度は、傷つけず……守りてェって思ってる」  手が、震える。 「……子供の頃、悪い噂を流したこと……反省、してるか」 「悔やまなかった日はねェよ。過去に戻って、ちゃんとやり直せるかどうかは保証できねェけど」 「俺のこと脅して、無理矢理抱いたことは?」 「間違ったことをしたとは思ってるが、あのとき……アレ以外にお前を繋ぎとめておける正しい方法があったのかは、分かっちゃいねェよ」  普通、もう少し悪びれたり……落ち込んだり、反省したりしてる姿勢を見せるものじゃないか?  なのに、何なんだ? この、ドシッと構えた感じは。 (……あぁ、まったく……っ)  震えた手を、しっかりと握る。  そして俺は……美鶴を、見上げた。 「――お前って、本当に……昔から変わってないな」  子供の頃。  女のクラスメイトに『美鶴が自分のことをどう思っているのか訊いてほしい』と何度も頼まれた。  その度に、美鶴は同じことを答えていたんだ。 『今度はアイツか……。好きじゃないし興味もない。そう答えておけ』  俺は一度だけ、気になることを質問した。 『美鶴、好きな子とかいないのか?』  そうしたら、美鶴は何て言ったと思う? 『――お前より?』  あの時は『そういう友達的な好きじゃなくて』って思ったけど……今なら、分かる。  色んな女子に、アタックされて。  年下から年上まで、沢山の女の子がいたのに。  コイツは、ずっと……俺が一番だったんだぞ?  ――だから、そんな美鶴が。 「――俺も……美鶴が、好きだ。……と、思う」  自分勝手で、ワガママだけど……自分を一切曲げない、美鶴のことが。  真っ直ぐすぎて不器用で、下手くそな愛情表現をしてくるところも。  ――俺はずっと、好きだったんだ。 「……い、ま……な、んて……ッ?」  言われたことが、理解できない。  そんな顔をしながら、美鶴が俺を見下ろす。 「だ、だから……っ! 俺も、美鶴が……た、たぶん、好き……っ」 「『たぶん』って何だよ」 「たぶんは、たぶんだろ……っ! 仕方ないだろ……っ! 俺、ずっと美鶴のこと嫌いだと思ってたし……今だって、お前の自分勝手で俺様すぎるところ、どうかと思ってるし……っ! 悪い噂流したことも、無理矢理抱いてきたことも、許してないんだからな……っ!」  美鶴がしたことは、シンプルに悪いことだ。  俺はそれを……悪意からの行動だと思っていた。だから、許せなかったし……嫌いになろうと思い込んだ。  全部、愛情の空回りだったと知って……それで、許せるかどうかと訊かれると……まだ、難しい。  ――でも、もう。 「だけど、俺はさ……好きな人のことを悪く思うのは、もう……いやだよ」  プレゼントをしてくれて、嬉しかった。  先輩たちから守ろうとしてくれたのも。  先輩たちの告白を一蹴したのも……嬉しかった。  美鶴が詩織を好きじゃないって分かって、ホッとしてるし。 「美鶴……っ」  俺が抱きついたら。 「……真冬」  抱き締め返してくれる。  だから、今は……好きって気持ちだけに、目を向けたいんだ。

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