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美鶴のベッドに押し倒されるのは、何回目だろう。
「んっ、んん……ふ、っ」
荒々しいキスをされるのだって、何回目なのか。
「ん、っ! ……は、っ」
もう、覚えていない。
顔が離れると、美鶴が満足そうに笑っていた。
「……夢、みたいなんだよ」
目を細めて。
幸せを、噛み締めるように。
そんな……美鶴らしくない、笑顔。
「毎週、イヤなクセにちゃァんと俺様に抱かれてよォ。なのに最近じゃ、物欲しそうな目をしてるときもあって……早く、俺様のモノになればいいのにって……ずっと、そう思ってたんだぜ?」
「も、物欲しそうな目なんてしてないだろ……っ!」
「無自覚かよ」
美鶴の顔が、すぐに近付く。
「んむ、っ! んんっ、ふ、ぅ……っ」
触れる程度じゃない。
歯列をなぞって、舌を掬って。
俺の全部を味わうような……そんな、キス。
「――っ、は」
キスをされている間は、苦しいのに。
離れると、寂しい。
「ホラな。……物欲しそうな目、してるだろ?」
「……っ」
美鶴にキスをされるのが、好きだ。
ぴったりとくっついていると、幸せだなって思う。
離れられると寂しくなるから、早くそばにきてほしい。
「美鶴……っ」
両手を伸ばして、美鶴を抱き締める。
そうすると、美鶴はすぐに応じてくれた。
「真冬、好きだ。……お前も、言えよ」
「……っ。お、俺も……ちょっとだけ……お前が、好き……っ」
「『ちょっと』だと? 足りねェ。……もっとだ」
ネクタイが、ゆっくりと解かれて。
ワイシャツのボタンが、一つずつ外されていく。
「あ……っ」
じれったい速度に、俺は美鶴にしがみつく手の力を強くする。
「そ、そこそこ……好き。たぶん、好き、だから……っ」
口にすると、胸の中にジワジワと広がっていく……多幸感。
『嫌い』って言うより、断然いい。
「釈然としねェんだけど……まァ、いいか」
「うる、さい……っ。……美鶴も、言って……ほしい」
「ン? 好きだぜ?」
「名前も、呼んでほしい……っ」
二人きりのとき、美鶴が俺の名前を呼ぶと。
「真冬、好きだ。お前が思ってるより、ずっとな」
優しい響きになる。
俺はきっと、こんなに優しく美鶴の名前を呼べない。
こんなにストレートな気持ちを、言葉に乗せたりできないと思う。
「ん、あ……っ」
ワイシャツを開かれ、上半身が露わになる。
美鶴に見つめられると、どうしていいのか分からない。
「お前が俺様のことを好きなんだって思うと……たまんねェな」
「ま、まだ、不確定……っ」
「うるせェなァ」
もう一度、キスをされる。
「それでも、いいんだよ。……お前が俺を『好きかもしれない』ってだけで、メチャクチャ興奮する……ッ」
ベルトを外して、美鶴が笑う。
少しずつ、裸にされていく。
美鶴に全部、見られてしまう。
それがすごく、恥ずかしいのに。
「……好きに、して……いい、から……っ」
脅されてじゃなく。
仕方なくとかでも、ない。
俺は今から、美鶴と。
「……優しくする努力はするが、激しくもする」
愛のある行為を、するんだ。
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