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翌朝。
「……美鶴」
俺様の隣で寝転がっている真冬が、甘えるようにすり寄ってきた。
『珍しいな』と、思うと同時に。
(……クソ、可愛すぎるんだよ……ッ)
普段はこんなこと、絶対にしてこない。
なのに、今日はそういう気分だったのか……真冬は俺様から離れようとしなかった。
今まで散々、真冬には逃げられてきたのだ。いくら俺様の自業自得だったとはいえ、精神的にくるダメージってモンはあった。
それが今、こうしてくっついてきていると思うと……感慨深い。感激もひとしおってやつだ。
俺様は頭を撫でてやりながら、真冬と向かい合った。
「何だよ、真冬?」
「……別に。……呼んだだけ、だ」
自分の行動を、恥ずかしく思ったんだろう。
向かい合った真冬の顔が、真っ赤になっている。
(……コイツ。こういう可愛さ、どこで学んでくるんだ?)
頭を撫でたら、いつだって真冬は嬉しそうだ。
だがそれと同じく、喜んでいるということをいつだって必死に隠そうとする。
「や、やめろよ……っ」
と言うのは、まさに口だけ。
その証拠に、真冬の声には怒気がない。
付き合ってからも、真冬はあまり素直にならなかった。
ツンとして、素っ気無い言葉ばかり使う。
だが、ガキの頃から真冬だけを見てきた俺様は……些細な変化にも気付ける。
「真冬、こっち向け」
「……ん」
例えば、俺様に命令されても文句を言わないとき。
そういうときは決まって、他のことを考えている。
例えば、今だと、そうだな……。
……キスしてほしいとか、もっと甘えてもいいのか……とかだろうな。
だったら、やってやることは一つ。
ムッとした顔の真冬に、キスをしてやる。
「っ!」
俺様の読みは的中だったらしい。
真冬は真っ赤になり、毛布の中に顔を隠した。
「キス以上のこともしてるのにか?」
「う、るさいな……っ!」
つい数時間前にセックスしたばかりだぞ?
……だが、真冬にとったらキスってのは恥ずかしいモンらしい。
このままもっと恥ずかしがらせるのも楽しそうだが、それだと真冬が毛布から出てきてくれないだろう。
俺様は瞬時に、別の話題を提示する。
「真冬、メシでも作ってくれよ」
「はぁ?」
案の定。
すぐに、真冬は毛布から出てきた。
……もう顔は赤くないのか。つまんねェ。
「いっつも思うんだけど、何で俺が飯作らないといけないんだよ!」
「は? イヤなのかよ?」
「絶対ヤダってわけじゃないけど、その……腰、とかさ……っ」
ボソボソと、真冬がなにかを言っている。
「……あぁ。散々抱かれたせいで、腰が痛いのか?」
「わざとらしくハッキリ言うな! 美鶴のドアホ!」
俺様のことをあれだけ激しく求めたんだ。
それは、腰だって痛くもなるだろうな。
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