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 顔を真っ赤にした真冬は、不満げに怒鳴ってきた。 「お、お前が、あんなに……すっ、するから……っ!」 「いや、真冬が気持ち良さそうな声出すのが悪いだろ」 「何で抱かれてる方の俺が加害者なんだよ! いっつも手を出してくるのはお前だろ!」 「手ェ出さなかったら出さなかったで、物欲しそうな目してくンのはお前だろ?」  確かに抱いてるのは俺様だが、だからって全部が全部俺様のせいじゃないだろう。  真冬の独自解釈が、なんとなく面白くない。  ついついムッとして、強めに反論をしてみる。 「ば……っ!」  そうすると、真冬は顔を更に赤くした。  なにか言いたげに口を開いては、閉じている。  ……おそらく、昨日のセックス中に自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのか、思い出したんだろうな。  マジで、真冬は分かりやすい。  真冬は素直に、自分からねだることはあまりしない。  『もっと』なんて直接的なセリフを、吐いたりしないのだ。  ……それでも、体が求めてきてるんだから仕方ない。 (そう言えば……高校に入って、初めて俺様の家に来た時もそうだったな)  俺様のことが大嫌いだと言っていたくせに、扱いたら気持ち良さそうな声を出して。  命じたら素直に足を開いて、俺様の手で射精した。  正直なところ、俺様はモテる。  だから、真冬以外の奴と何回かセックスをしたことだってある。  その経験に比べたら、真冬との行為は……ただ触って、イかせただけ。  なのに、情けない話。 (たったそれだけの行為が、それまでの人生で一番興奮したんだよなァ)  それだけ、俺様は真冬が好きだったということだ。  何で真冬を好きなのか。いつから真冬を特別だと思っていたのかなんて、そんな小さいことは覚えてない。  きっかけなんか覚えてなくたって、俺様が真冬を好きって現実に変わりはないからな。  いよいよ本格的に拗ねてしまった真冬を、抱き寄せる。 「……何だよ、ドヘンタイ」 「ただの気まぐれだ」  今こうして、真冬と付き合えているという現実。  それが、素直に。……本当に、嬉しい。  独占欲は、人一倍ある。真冬を愛してるという気持ちは、誰にも負けない。  だが、もしかしたら。  ――真冬はそれを、嫌がるんじゃないか。  ――俺様のそばから、離れていくかもしれない。  そっぽを向かれて、遠くに逃げられる。  真冬ともう一度疎遠になることよりも辛いことなんか、他にない。 (ガラにもねェな……)  弱気になっている自分が情けなくて、真冬を強く抱き締める。  そうしていると、不意に。  ――唇に、柔らかい感触がした。  驚いた俺様はすかさず、真冬を見る。  キスをしてきた犯人なんて、真冬しかいないからだ。  真冬は真っ赤になって俯くと、またしてもブツブツと呟き声でなにかを言い始める。 「お前って本当に、分かりやすい。……なに落ち込んでるんだよ、ばか……」 「俺様が? 落ち込んでるワケないだろ」 「あっそ」  真冬のことなら、何だって気付けるつもりだ。  だけど、もしかしたら。 (……何で、バレたんだ?)  真冬にとっての俺様も、そうなのかもしれない。  そう思うと同時に、何でか……胸の辺りがモゾモゾとした。 オマケ話【俺様の可愛い恋人は】 了

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