2 / 50
02
「俺、男ばっかの3人兄弟で、落ち着きないし、頼りないってよく言われるんですよね。見た目ばっか成長して、中身ほんとガキのまんまっていうか。だから、鷗さんみたいなクールな人、憧れます」
「そんな、こ、と」
「そうゆう、多くを語んないってのが。俺めっちゃお喋りでしょ?すいません。喋ってないと不安っていうか、早くみんなと仲良くなりたいっていうか」
そう言うと、もじもじと目を逸らす俺の顔を覗き込み、那緒はデカい子犬のように唇を尖らせた。
その途端、突然のイケメンのドアップに緊張を通り越して、恐怖を覚える情けない俺。
やめろよ、と拒否するでもなく、冗談交じりに笑えるわけでもない。ただただ、硬直。
「うーん、やっぱ鷗さんクールっす。あれだ、目かな?キリっとしてて、かっこいいの。三白眼気味ですよね?奥二重?顔とか肩とか小ちゃいのに、普通に男だし。落ち着きがかっこ良さを引き出すのか?」
ぶつぶつと俺を分析する那緒を前に、足りない脳みそを回転させ、どういう行動が彼にとって正解なのか
を必死で考える。
これは、落ち着いているわけじゃないんだ。
固まってるだけ。
キャパシティオーバーで、対処し切れないだけ。
表情筋が弱いから、顔に出ないだけ。
言い訳したいことは山ほどあるのに、うまく声にならない。
太い他人の指が頬に触れ、首筋を撫で肩を通る。
次第にそれは腰へ滑り落ち、尻をかすめ、俺の体は思わずひくんと跳ねた。
「うわ、すいません!俺昔っから距離感おかしいって言われてて、夢中になるとわかんなくなるんで。無意識にめっちゃ触ってた。すいません」
やば、気をつけよう、と独り言を呟く那緒。
大きな手が体から離れていく。
心臓が、今更ながら早鐘を打った。
ともだちにシェアしよう!