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「てかね、今、僕めっちゃ虫の居所が悪いんですよね。何でかって?浮気ですよ、浮気。この前付き合ったばっかの彼氏が浮気ですよ。これ殺害しても無罪レベルですよね。僕が頭悪いからって舐めんですよ」
「彼氏って、前ウチに来た銀行マンの?」
琥珀の虫の居所が悪いのは今に始まったことじゃないし、それが理由で尻を抓られる理由もまた不明。
危害を加えるにしろ優しくするにしろ、人の体に触れたがるのは甘えたい証拠だから、と珊瑚に言われたセリフを脳内で繰り返す。
俺の尻にいくつ青痣ができたとか、琥珀や珊瑚には関係なかった。
「でも、僕ももともとNGていうか、鷗さんと違って変態プレイお断りなんですよね。痛いの嫌いだし」
「俺だって、別に変態とか」
「はあ?28にもなって自分のじいさんに全裸強要されたり、叔父さんにエロい道具でアナル開かれたりしてるキチガイが変態じゃなかったら何ですか?」
「それは、なんで、知って。でも、俺が好きで」
「さっすが幼少期からレイプ虐待されてる人は、違いますよね。普通の感覚が狂ってんですよ。だから、欠陥してるって言われるんです」
捲し立てる琥珀の言葉に、何か言い返そうとも追いつかない。
口数が少ないのは、クールでもなんでもなくて、単純に愚鈍だから。
頭で思い浮かぶセリフも、口が上手く動かない。
「那緒のアホはクールだ、セクシーだ言ってますけど、真実はただのガリガリ痩せギスオヤジですから。気味悪いんですよね、辛気臭いし、トカゲっぽくて」
琥珀のストレス発散サンドバッグには、持ってこいなんだろう。
「高校時代?兄ちゃんともヤってんですよね。写真見ました。無表情でレイプされて。慣れって凄いですよ。僕はアンタみたいなゲテモノ無理ですけど」
珊瑚が俺を雇った理由はたぶんこれだと思う。
じゃなきゃ、俺みたいな欠陥人間、自分だって選ばない。
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