11 / 50

02

「新しい家族の、麻生(あそう)鷗くんです。よろこびの里っ子のみなさん。これから仲良くしましょうね」  室内で、生まれて初めて服を着た。  同年代の友達が、家族として扱われる施設。  初めましての挨拶で、俺は50人の家族ができた。 「鷗、家族の印ごっこしよ」  当時、同室のメンバー内で流行っていた儀式。  生贄を家族の証として裸で寝かせて、全員で永遠の家族を誓い合う。  生贄役はいつも、新参者の俺だった。  一番家族から遠い存在だから、一番たくさん生贄になる必要があるらしい。  バカな俺はそれを信じ、自ら進んで服を脱いだ。 「鷗の体って変だよな。14なのに、ちん毛ないし」 「え、俺、変なの?」 「変だよ。凄く変。シュジュツしなきゃ」  敷かれた布団に四肢を広げて抑えられ、ちんちんを観察される。  部屋のリーダーは高校生で、その手のことをよく知っているらしく、いつも俺たちの先生だった。 「鷗は洗礼を受けていないから、一人だけ体が変なんだよ。痛くても、痛がっちゃいけないし、これは大人に話しちゃいけない。子どもだけの秘密だ」  ライターに火が灯る。  ニヤニヤと俺を取り囲む顔、顔、顔。 「うぎゃああああッ」  先端を軽く炙られただけで涙が出た。 「修行が足りないからだ。このままじゃ、おまえはずっと誰の家族にもなれないんだ、いいのか?」  世間知らずで頭の悪い俺は、すがりつくようにもう一度、もう一度とチャンスを懇願する。  その内、ある程度の痛みなら我慢できるようになった。  ちんちんがバカになって、お漏らしする日もあったけど、裸の俺を高校生の大きな体が包んでくれた。  眠るまで、優しく抱きしめ、背中を撫でてくれた。  俺は、家族を知った。

ともだちにシェアしよう!