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03
「えと、え、あの、ぷ、プリンとか」
「プリン!?」
「甘いもの、子どもんとき食ったことあんまなくて、プリン食べたとき、びっくりした。シュークリームもびっくりした」
そう言って後悔する。
クールからかけ離れたラインナップ。
案の定してやったりの顔で、琥珀が俺を見ていた。
「プリンですか。イメージなかったな」
「あ、えと。でも、今は普通、で。焼肉とか」
「プリン良いっすね!可愛い。ギャップ萌え。俺、今めっちゃ、鷗さんがプリン食ってるとこ脳内再生してますもん。口、小ちゃいから、シュークリーム食うの下手そうだなあ、とか」
那緒の手が、俺の顎を引き上げる。
これは、俗に言う『顎クイ』。
悔しそうな琥珀の顔に、一抹の不安を覚えるが、この幸せとトキメキとが、俺の脳を占領していく。
「でも、クールじゃ、ないだろ」
「キュートですね。俺、庇護欲強い方だから、恋人は絶対可愛いタイプがいいです。見た目とかじゃなくて、中身がキュートな人、好きです」
す、好き!!?
いや、那緒に他意はない。
自惚れんな。勘違いオヤジはキツイぞ、俺。
しっかりしろ、俺。
「でも、な、那緒っていっぱい食べる子が好きなんだろ?じゃあ鷗さんじゃ無理だよ。鷗さん、シュークリーム1個食うのも必死だと思うし」
那緒の背中にすがりつく琥珀は、わがままを言う子どものようだ。
不安気で、今にもへし折られそうなプライドが、こっちを見て、と訴えている。
「したら残りは俺が食ったげますよ」
「シュークリーム?」
「シュークリームだろうが何だろうが。どこ食いに行ったって、俺がいると安心でしょ?俺好き嫌いないし、めちゃめちゃ食うんで」
そう言って笑う那緒を見て、俺、この子のこと、本気で好きになっちゃったんだなあ、って考えてた。
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