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「良い気になってんじゃないわよゴミクズ。私の方から重形さんに再接待を申し出たわ。サーブはあんたよ、鷗。男性3名でご来店されて、予約は2時間。命令は絶対服従。例外は認めない」  琥珀と同じくっきりとした二重まぶた。  その奥で、珊瑚の瞳がギラリとこちらを睨む。 「それから、昨日の詫びを土下座して…。まあ、そうね『中出ししてください』くらい言ってみれば?あんたの何がいいのかわかんないけど、重形さんはあんたにご執心みたいだからね。満足させらんなければ、クビ。出てってもらうからね」  珊瑚の目は本気のそれだった。  脂ぎったおっさんの命令を全てこなした上に、尻穴まで提供するなど、想像するだけでおぞましい。    以前の『男体盛り』の無茶振りも、ろくなものじゃなかった。  彼が俺に熱心なのは、愛しいとか、可愛い、とか好きとかそういう類の感情ではない。 「感情が欠落したセックスAIくん」  痛みや屈辱に無言で耐えれば、重形は俺を面白半分にそう呼ぶのだ。  過去が人間を形成する。  おまえみたいな人生負け組、幸せになれない。    重形に言われずとも、そんなこと自分が一番よくわかっていた。 「それと、あんた那緒のこと変な目で見てるらしいじゃない。ヤメておきなさい。あれは特殊な人間。採用しといてなんだけど、私たちとは生きる世界が違うのよ。万人に優しくて、正義感があって。いわば日向の人間。あの子巻き込んで不幸にする気?」  ポケットから、珊瑚はタバコを取り出す。  流れる仕草でタバコに火をつけ、俺の顔にふーっと煙を吐き付けた。 「お、俺と、いると不幸?」 「当たり前でしょ。あんた、人を幸せにしたことないじゃない、この30年間。一度も」  心臓を引きちぎられるような感覚だった。  忘れていた。  俺は人を不幸にしても、誰かを幸せになどしたことがなかったのだ。  最後はみんな、俺のことが嫌になる。  そうだった。  俺だって、俺みたいなヤツ、大嫌いだ。

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