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第7話※
体格の良い、たるんだイノシシのような男。
約束の日、重形は予定時間よりうんと早く現れて、若い二人の男を連れてきた。
「いやあ、教育頼むよ珊瑚ちゃん」
俺と一緒に頭を下げる珊瑚へ、毛むくじゃらの太い腕を伸ばす。
ハーフアップにした黒髪をすき、鍛えられた珊瑚の胸筋をニヤニヤと揉みしだいている。
バリタチ宣言済みの珊瑚は、大抵の無遠慮な手に遠慮なくブチギレたし、重役相手にはさらりとかわすトークスキルもあるのに。
今は黙って、その手を受け入れていた。
「せっかく美人なんだ。アホみたいなヤンキーおかまなんてキャラ辞めて、髭剃ってそれなりにしてれば」
重形は腰に巻いた珊瑚のエプロンをまさぐると、布越しにも存在感のある性器を上下に擦る。
珊瑚は苦悶の表情で、すみません、とだけ呟いた。
「本当はこんなチビで根暗の貧相オヤジじゃなくて、キミみたいに屈強なデカマラを虐めるのが好きなんだけどね。どうもそれはNGらしいから」
チビで根暗の貧相オヤジは、俺。
今にもグーパンチを繰り出しそうな珊瑚も、懸命に自身を押さえ込んで、重形の愛撫に甘んじていた。
「ま、いいや。その分、こっちを好きにしていいって話だし。セックスAIくんなら、感情抜きでいろいろ試せるから。これはこれでアリっちゃアリ」
重形はがっはっはと大声で笑い、ブチギレ寸前の珊瑚からようやく離れた。
「申し訳ございません。では、ごゆっくりと」
握り締めた拳を解くことなく、形式的に頭を下げた珊瑚は、俺を一瞥するとカウンターへ戻って行った。
「重形さんの言ってた通り、めっちゃ威圧感ある美人ゴリラですね。俺興奮しちゃいましたよッ」
後ろでことの成り行きを見守っていた、重形の連れのメガネが、嬉しそうに口走る。
重形もまんざらではない顔で、相槌を打った。
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