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03
薄暗い店内とはいえ、隠す術もない状況。
トレーにシャンパンを3つ乗せた俺は、文字通り一糸纏わぬ姿で彼らの前に現れる。
体中のあちこちに視線が突き刺さるような気分。
膝が震え、屈辱に逃げ出したくなった。
「俺は俄然珊瑚さんみたいなゴツいヤンキーがタイプですけど、こっちもなんて言うか、背徳感があって悪くないですね、重形さん」
シャンパンを受け取ったメガネは、ふんと鼻を鳴らして俺の体を眺めている。
重形も松井もそれに習った。
「背徳感たあ、上手く言うね。28のおっさんのくせに、妙におぼこい。そのくせ、ロボットみたく無表情で、誰にでも平気でちんぽこ晒す欠陥人間だよ」
細身のグラスが重形の乾杯でぶつかり合う。
キン、と高い音が鳴って、三人はグラスを口元へと運んだ。
「生ハムとレンコンのカルパッチョです、重形さんプロシュート好きでしょ?」
珍しく自ら料理を運んで来た珊瑚が、ガラスのローテーブルに皿を並べる。
オレンジの薄明かりに照らされたハムが、てらてらと光っていた。
きっと、美味しいのだろう。
食べ物に頓着はなかったが、自分の人生経験上、金銭的に口にしてこなかった料理には興味はあった。
珊瑚は俺に賄いを作ってくれないので、バーと同じ雑居ビルにあるコンビニの菓子パンを食べている。
メロンパン、クリームパン、プリンパン。
子どもの頃よりうんと自由な食生活でも、生ハムは未経験のままだった。
「いつ来ても珊瑚ちゃんの料理は美味しそうだ」
松井とメガネに目配せをしながら、重形は笑う。
「ありがとうございます。切って並べただけですが」
しかし、重形の世辞を一蹴するよう、珊瑚は軽く会釈をしてそれだけ言って、帰ってしまった。
どこか重たい空気の中、銀のフォークが生ハムとレンコンをさくりと刺す。
珊瑚に体よくあしらわれた重形は、怒りの矛先を俺へ向けた。
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