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 地獄のような、時間を過ごした。  重形たちを店から送り出すまでに、体も心もすっかり憔悴し切っていた。  たった2時間程度で、俺の全てはなくなった。  まだ仕事があると珊瑚に呼び止められるのを無視して、俺は店を飛び出した。  雑居ビルの地下からもがくように地上へ向かう。  外に出ても、視界は真っ暗なままだった。  行き交う人にぶつかりながら、俺は必死に走った。  ボロアパートの錆びた階段を駆け上がる。  震える手で鍵をこじ開け、履き潰したスニーカーを脱ぎ捨てた俺は風呂場へ直行する。  狭い浴槽と、小さな洗面台とが一緒くたになったトイレで胃液をぶちまける。  朝から何も食べていない。  こみ上げてくるのは、胃液と、男三人分の精液。 「うえ、う、おえッ」  体中が痛む。  よれたスウェットパンツと、下着を下ろし、シャワーの蛇口を捻った。  尻からこぼれる、どろりとした体液。  どいつもこいつも、好き勝手して。  人を人とも思わずに。  意識を飛ばしても、繰り返される暴行に嫌でも現実世界へ引き戻される。  重形のねちっこいセックス。  見当違いも甚だしい。  国見だってやっぱりいい人なんかじゃない。  でも、一番最悪なのは、松井って男。    殴るし、蹴るし、踏みつけるし。  痛いって泣いても許してくれない。 「みすぼらしくて、貧相なオナホちゃん」  耳元で今もあいつの声がへばりつく。  パーカーを脱ぎ捨て、全身に冷水を浴びた。 「汚い。汚くて、惨めだ」  押さえ込んでいたはずの奥底にある気持ちが、次々に口から溢れ出る。 「俺は、汚い。バカでゴミで、生きる価値もない」  簡単なことなのに、見て見ぬ振りをしてきた。  そうだ、至極簡単なことだ。  俺なんて、いらない。  初めから、わかってたのに。

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