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06
地獄のような、時間を過ごした。
重形たちを店から送り出すまでに、体も心もすっかり憔悴し切っていた。
たった2時間程度で、俺の全てはなくなった。
まだ仕事があると珊瑚に呼び止められるのを無視して、俺は店を飛び出した。
雑居ビルの地下からもがくように地上へ向かう。
外に出ても、視界は真っ暗なままだった。
行き交う人にぶつかりながら、俺は必死に走った。
ボロアパートの錆びた階段を駆け上がる。
震える手で鍵をこじ開け、履き潰したスニーカーを脱ぎ捨てた俺は風呂場へ直行する。
狭い浴槽と、小さな洗面台とが一緒くたになったトイレで胃液をぶちまける。
朝から何も食べていない。
こみ上げてくるのは、胃液と、男三人分の精液。
「うえ、う、おえッ」
体中が痛む。
よれたスウェットパンツと、下着を下ろし、シャワーの蛇口を捻った。
尻からこぼれる、どろりとした体液。
どいつもこいつも、好き勝手して。
人を人とも思わずに。
意識を飛ばしても、繰り返される暴行に嫌でも現実世界へ引き戻される。
重形のねちっこいセックス。
見当違いも甚だしい。
国見だってやっぱりいい人なんかじゃない。
でも、一番最悪なのは、松井って男。
殴るし、蹴るし、踏みつけるし。
痛いって泣いても許してくれない。
「みすぼらしくて、貧相なオナホちゃん」
耳元で今もあいつの声がへばりつく。
パーカーを脱ぎ捨て、全身に冷水を浴びた。
「汚い。汚くて、惨めだ」
押さえ込んでいたはずの奥底にある気持ちが、次々に口から溢れ出る。
「俺は、汚い。バカでゴミで、生きる価値もない」
簡単なことなのに、見て見ぬ振りをしてきた。
そうだ、至極簡単なことだ。
俺なんて、いらない。
初めから、わかってたのに。
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