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 那緒の思う理想とか、クールとか、全部違う。  俺は本当にダメなヤツで、俺といるとみんな嫌なヤツになる。  通話の切れたスマホを片手に、急に心細くなった。  傷だらけの膝を抱え、唇を噛む。    薄いカーテンの向こうに、チカチカと点滅するたくさんの光が見えた。  窓一枚向こうはこんなにも明るいのに、俺の周りはいつも真っ暗闇だった。  伸ばした手は、誰も掴めない。  俺は本当に、ダメなヤツで。 「ダメじゃないですよ、全然」  いきなり、俺の肩を、誰かの大きな手が力強く抱き寄せた。  俺を痛めつけようとしない、優しい手。  俺を辱しめようとしない、温かい手。  顔を見なくったってわかる。これは、那緒だ。 「なんで」  唇が震える。  見上げれば、肩で息をする那緒の姿。 「なんか、鷗さんが、いなくなっちゃいそうで。一人で悲しんでそうで。俺みたいなガキ、迷惑だってわかってんですけど、鷗さんが辛いとき、そばにいたいって思ってるから。だからさ」  那緒の腕が、俺の体を包み込む。  那緒は、俺を傷つけない。  那緒の優しさにつけ込むズルい俺は、那緒の優しさにすがりつく。 「なんで、来たんだよ」 「すいません。だって、鷗さんが」  俺に会いたいって言ってくれたんじゃないですか。  胸に寄せた耳へ、彼の心音が伝わってくる。  俺の言葉はいつだって無意味で、小さくて、誰にも届かなかったはずなのに。  そんな声すら那緒はすくい上げてくれるのだ。  ちっぽけな俺にも、話していいんだよ、って。  言葉が、心臓から込み上げる。 「…あ、な、那緒、俺、あのな。全然、おまえの、俺、ぜ、全然オトナじゃなくて…だから、俺」  那緒の手にきゅっと力がこもる。    俺はずっと誰かにこうしてもらいたかった。    

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