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02
「鷗さん!」
頬を両手で挟まれ、強制的に顔を上げられる。
那緒の目は真剣で、窓の向こうの夜景よりキラキラと輝いていた。
「バカ鷗!俺を、今までの男と同じにすんじゃねーよ!あんた、俺と一緒に幸せになるんだろ?なんであんたの方が幸せから遠のこうとしてんだバカッ」
ガチガチと音を立てていた歯列が治る。
那緒の綺麗な目の中に、俺の顔が揺れて映った。
「確かに俺じゃ頼んないだろうけど、男とだってそんなよく知らないし…、お、女の子との経験も自慢するほどあるわけじゃないけど、さあッ」
那緒の表情が、少年のそれっぽさに変わる。
唇を尖らせて、視線もどこか所在なさげで、それでも俺の頬をずっとしっとりと包んでいた。
「わ、わかんないことばっかだよ!俺だっていっぱいいっぱいなんだって。鷗さん、俺のこと置いてけぼりにするし、くっそ、俺も、もうちょっとこう経験値豊富なイケてる男だったら…」
「ふ、ふ、ふはははははッ」
しゅん、と肩を落とす那緒を前に思わず声が出た。
那緒はハッと顔を上げ、さらに唇を突き出す。
「いや、え!ここで笑います?てか、笑った顔初めて見ましたよ。このタイミングで!」
「あははははッ」
「めっちゃツボってんじゃないですかあ!くそー、オトナの余裕見せつけられてる。くそ、しかもなにその顔。………めっちゃかわいーじゃん」
那緒は俺にキスをして、笑いながら、二人一緒に湿った布団へ倒れ込んだ。
胸元に、那緒の手が滑り落ちる。
合理的じゃないと思っていた拙い愛撫に、おかしいくらい体が反応する。
散々いじめ抜かれた乳首に、那緒が吸い付いた。
舌先で先端を転がされ、俺の性器が簡単に頭をもたげ始める。
優しいのは、ダメだ。
体が言うことを聞かなくなる。
肋骨の一本一本を舌で確かめるよう、那緒が俺に丁寧に触れた。
大事にされてることを、肌で感じられた。
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