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第10話

 仕事前ともあって、さすがに中には出されなかったが、遅漏気味の那緒が満足するまで、俺は彼に揺さぶられ続けた。  激しいセックスのあとは、さすがにそれなりに体に影響があるわけで。  珊瑚から、ビール樽をサーバーまで運べと言われたときは、本気でぶっ倒れるかと思った。 「正直、どのツラ下げてって感じですよね。学生の那緒に仲介してもらってまで帰って来て」  閉店作業中、疲労感で椅子にうなだれる俺へ、琥珀が冷たく吐き捨てる。  薄々こうなる気がしていたが、琥珀との関係は、俺がここに来たばかりの頃より溝ができた。  那緒にフォローしてもらうことで、琥珀の逆鱗に触れるリスクは予想されていたが、毎日毎日ねちねちされては気が滅入った。 「これやってた方が稼げんじゃないですか?お似合いですし、あんたには」  最近はことあるごとにスマホを取り出し、俺と自分の兄とが交わる動画を見せつけてくる。  体格差のせいで完全に俺はおもちゃ状態で、何度見ても気分が悪くなった。 「那緒に頼ったのは、悪かったと思ってるよ」  数ヶ月前の自分がおもちゃのように甚振られるシーンを尻目に、同じくだりを何度も繰り返す。  プライドは高いくせに自尊心が底辺な琥珀は、俺みたいな人間を見下すことでどうにか自分を保つ。  いい迷惑だと一蹴したいが、琥珀に激甘な珊瑚がバックにいるとそう簡単にはいかなかった。 「学生相手におっさんが色目使って気色悪いんだよ」 「そんなことは、してない」 「鷗さんの利用価値って、妊娠しないってとこでしょ。あと、多少無茶しても翌日けろっとしてるから、乱暴目的の浮気相手にもピッタリってとこくらい」  琥珀は嘲笑するよう呟くと、こちらにスマホを向けてカメラを起動した。  店に戻ってからの日課となりつつある、琥珀のストレス発散方法。  ぺこん、と脳天気な音とともにビデオボタンが押されたことを理解する。 「とりあえず今日も、ここで服全部脱いでください」  那緒との約束があるというのに、粘着質なガキは憂さ晴らしに命令した。  

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