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02
「最近は、何人と寝てる」
小さなローテーブルで向かい合い、久しぶりに会った甥っ子への最初の話題がこれか。
冷蔵庫になにも入っていなかったので、仕方なく水道水をひねって出すと、再び舌打ちが返ってきた。
「客人に水道水とは、お里が知れる。あのバカ兄にこのバカ息子有りだ」
「すみません」
「おまえみたいなど底辺には勿体ないが、妻の実家の酒蔵から送られて来た焼酎を持ってきてやった」
上から目線を絵に描いたような男は、どさり、と酒瓶の入った紙袋をテーブルへ置く。
酒は苦手だと言うより早く、「俺の酒を飲まない選択肢などおまえごときにない」と言い放たれた。
「おまえを気にかける数少ない親族の一人として、ゆっくりおまえの近況を聞かせてもらうぞ」
「そんな、大したことは…」
「バカ。おまえは脳足りんだから、物事の大小が理解できていないんだ。手当たり次第男を引っ捕まえて、誰にでも喜んで股を開く男は、普通じゃないからな」
グラスの水道水を流しに捨てた和志は、自らの手で酒を注ぐ。
俺のガラスのコップにも、なみなみに酒入れた。
「まずは、飲め。ちびちび女々しく飲むなよ」
「……は、はい」
色は水道水と変わらないくせに、アルコール独特の臭いが、すでに俺をくらくらさせる。
昔からこの人は医者という職に就きながら、未成年の俺に酒を飲ませるど畜生だ。
飲まないと乱暴されるし、酔ってへろへろになっても乱暴された。
「で、最近何人と寝たんだ」
人には潔く飲めと言うくせに、和志はちびちびと酒を進める。
空きっ腹に酒を流す俺は、早々から胃がむかむかし始めていた。
「何人って…」
珊瑚、重形のオヤジとその連れの2人。
あとは連日、那緒とヤるだけ。
「5人くらい」
「ウソつけ。おまえのような年がら年中発情期の動物は、しょっちゅう尻慰めてもらわないと満足しないだろう?」
鼻で笑う和志の見解はあながち間違いではない。
回数は覚えたてのサル並みだが、特定の相手ができたがゆえに人数は少ない。
世間一般に5人が多い少ないはさておき、だ。
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