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 しぶしぶ酒を口にする。  味はまあ嫌いじゃない。  食べ物だってそうだ。  味が美味いまずいの話じゃなくて、食べることに不安や恐怖がのしかかる。  小さい頃の俺は腹が減ったと言えば殴られ、我慢のしすぎでぶっ倒れれば迷惑だと罵られた。 「まあ、いい。器具はいろいろ準備してきたからな。おまえが兄に似たどうしようもないクソ人間で、大嘘つきだってことは前々からわかっている」  最初から信じる気もない和志は、俺へ舐めるような視線を向ける。  酒蔵の一人娘の美人妻。  高校受験を控えた、妻そっくりの娘を持つ和志。  空手部の部長として全国へ行ったたくましい娘は、よく俺の比較対象だった。  思い出したくもない。  昨年無理やり参加させられた麻生家食事会。  和志や祖父に促され痴漢撃退法を披露した彼女に、俺は面白半分でサンドバッグにされ、金的を数発モロに食らった。    周囲は大笑いしていたが、俺には大惨事だった。  手答えがなかったと、遠回しに股間の小ささを揶揄され、あとから医者の和志に診察されるなど、嫌な思い出でしかない。  そんな、俺にとってはあまりよろしくない人間たちだが、和志は家族円満仲良くやっているようだった。  そんな男が俺の元に足繁く通うのには理由がある。 「先日、海外のメーカーから面白い器具を取り寄せてな。ついでだから、私の周辺で一番不健康そうなおまえの診察に使おうと思ってな」  和志はそばに置いた黒のレザーバッグを叩く。  中でいくつかの道具が、がちゃんと音を立てた。  極度の医療器具オタク。  最近では医療器具のみならず、身体に利用できそうな面白い道具を集めることに凝っているらしい。  そしてそのモルモットは、もっぱら俺の役だった。

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