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 和志と会ったせいか、嫌な夢を見た。  畳に裸で転がされていた俺は、息苦しさに目を覚ます。  部屋の中に、太陽の光が差し込んでいた。  和志の姿はない。  助かった。  酒のせいで記憶は曖昧だが、とりあえず満足して帰ったのだろう。  重い体を持ち上げる。 「うぐッ」  下半身に痛みが走った。  見れば性器の先端が赤い。  尿道口も幾分いつもより開いている気がした。  それから、案の定とも言うべきか、尻が痛む。  かなり奥まで無理やり引っ掻き回されたらしい。  こちらの意識が混沌としていてもおかまいなし。  まさに和志らしい、人畜非道な扱いだった。 「体、いてー」  布団が俺の体液でぐちゃぐちゃだ。  体調はすぐれないが、休む場所もなかった。  とにかく、何か飲みたい。  そう思って立ち上がろうとしたときだった。 「鷗さん、昨日は随分お楽しみだったみたいすね」  部屋の隅であぐらをかく、那緒と目が合った。 「な、那緒」  幻覚か?いや、本物だ。  くっきりとした二重の奥で、大きな黒目がこちらを見据えている。  大学が忙しいことを理由に、彼がうちに来なくなってからいつぶりだろうか。  俺は相変わらず那緒を前にするだけで、アドレナリン全開フル回転で、彼のもとに這い寄った。 「那緒、どうして」 「無用心ですよね、鷗さん。鍵開きっぱ。セックスの臭いぷんぷんさせて、股開いて、ぐーすかぐーすか」 「え、あ、な、那緒。なんか怒ってるのか」  いや、悲しんでる?  恐る恐る俺が差し出した手を、那緒は力いっぱいにはたき落とした。 「鷗さん、なんだかんだ言ったって、やっぱ経験豊富だし、大人だし、俺なんてガキだろうけど。恋人いて、平気で男連れ込めるとか神経疑うよ、俺」 「え、あ、俺」 「鷗さんにとって、俺って何?俺、やっぱ遊ばれてんのかな」  那緒の声が震えていた。

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