45 / 50
03
俺が、那緒をもてあそぶ?
どこにそんなスペックがあるというのか。
「友達にも言われました。トイレで毎日セックスとか頭オカシイって。そんな女、便宜上彼女って言ってるんですが、変態か遊びだって」
変態!!?
は、さておき、俺が那緒を遊びだって?
こんな粗悪品が、那緒みたいな一級品を?
それに、トイレでセックスって、おまえがいつも愛情チャージって言って甘えてくるからじゃないか。
「人の、せいか?」
よりによって俺の口からようやく出た言葉は、想像以上に冷たく聞こえた。
「は?」
那緒の顔が凍りつく。
いつも余裕いっぱいのくせに、そんな顔できるんだ、ってくらいに困惑している。
俺の、言葉に怯えているような。
「そ、そんだけ、やってりゃ、俺が忙しい間は誰かに慰めてもらってるって。やっぱ、そーなんだ。俺、鷗さんに会うの久々ですげえ電話したのに無視だし」
「えっ!」
部屋をキョロキョロと見渡せば、玄関の隅に転がっているスマホを見つけた。
バイト上がりでマナーモードのままだし、夜中は和志のせいで意識ぶっ飛んでたし、全然気付かなかった。
「鷗さんにとって、俺は都合の良い竿役…」
しゅん、と肩を落とす那緒。
子犬のような那緒の口からは衝撃の竿役発言。
「な、那緒?」
「てか、彼氏かどうかも今思えばわかんないですよね。付き合おうって言っても言われてもないし」
いつの間にか三角座りで小さくなっている。
自信に満ち溢れたイマドキの大学生はいない。
「那緒?俺、あの、悪かった」
素直に謝ってちゃんとやり直そう、と思った矢先、俺はどうやら選択肢を間違えたようだった。
「そうやって、ガキ扱いで、何でもすぐ謝って済まそうっての、俺やっぱ無理です」
那緒の声は震えていた。
ともだちにシェアしよう!