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第14話
いくら那緒のスマホに連絡を入れても既読スルー。
バイトのシフトは大幅にずらされ、すれ違いすらもしなくなった。
挙句、那緒をもっと入れたいからと、ただでさえ薄給の俺のシフトが削られる始末だった。
「鷗くんは相変わらず僕に塩対応だねえ…」
重形がいなくともちょくちょく店に顔を出すようになった松井が、ワインをサーブする俺の手を掴む。
珊瑚の計らいで一人でソファ席を陣取る松井のとなりに、強引に引き寄せられた。
「お尻の穴の奥まで知ってる仲じゃないか」
「レイプ魔」
「うわー、えげつないこと言うね。この小ちゃいお口は。合意合意。何回もイってたくせにさあ」
松井の膝に乗せられ、股間を布越しに撫でられる。
ただでさえ、初彼氏だと思っていた相手に浮気疑惑をかけられているのだ。
こんなところ琥珀に吹聴されれば泥沼が悪化する。
「一発だけでいいからさあ。今日バイトの後どう?」
「有り得ない」
「今度は痛くしないってば。あれば重形のおっさんの手前、サディスト役に徹底してただけだから」
胡散臭いウインク。
高そうなブランドスーツに、爽やかな香水の香り。
俺にはその価値がてんでわからないが、時計も靴もつやつやと輝いていた。
「たださあ、僕の大っきいから。鷗くんが非協力的だと怪我させちゃうかも知れないね。アンドロイドっぽい無機質な涙じゃなくてさ、感情がずぶずぶになったズタボロの鷗くんが見れたらさ、僕は思いっきりキミを甘やかして優しくするよ?」
エプロンの下でスラックスのチャックが下される。
長い指が布の間を割り、下着の上をなぞった。
足を閉じ、唇を噛む。
那緒が大事だから、こんな男に好き勝手にされるわけにはいかない。
松井から距離を取ろうと両手を突き出した。
その途端、松井の力はするりと緩み、俺は反動でガラスのローテーブルに倒れ込んだ。
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