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第2話

駅から学校までは歩いて10分。 斗真くんは小さい時から空手や合気道を親にやらされてきたようで、昨日の俺みたいに絡まれて返り討ちにしてから、色々な噂が広まって一目置かれるようになったらしい。 ボス的な不良に呼び出されて、タイマンさせられたとか、どこの不良漫画だ。 笑ってたら、笑い事じゃないからって言うけど、俺にはものすごい刺激だよ? 笑いのツボ押しまくり。 「じゃあもし、俺が絡まれたら助けてよ?」 戯けていってみる。 「良いよ。俺を一番に呼んでよ。」 長い前髪の隙間から覗く真剣な目に全神経が持って行かれた。 不覚にも、ときめいてしまったよ。 なんかズルイ。 またお昼にって、自分の席に行った斗真くんを見送り、俺も席に着く。 さっきのドキドキがまだ止まらない。 陸と道が来て、顔が赤いけど大丈夫か?と心配された。 そのツッコミは大変非常に申し訳ないのですが、今、俺の事は放置していて欲しいです。 陽介は眉間にシワを寄せて少し不機嫌だけど、何かあったのかな? 聞いたけど、何もって返事して自分の席に行っちゃった。 そして2時間目と3時間目の間の休憩時間に、騒ぎが起きた。 陸と道が男同士で付き合って居ると言う事をからかってきたのだ。 だから思わず言ってしまった。 「人が人を好きな事が何でダメなの?性別なんて大した事じゃないだろ?」 「男同士なんて気持ち悪いんだよ!セックスなんて尻使うんだろ?きたねぇわ!」 なぁ、と周りに同意を求めるようにするクラスメイトに辟易した。 「あのさ、俺たちだって親がする事して産まれてんだぞ?チンコ突っ込んで出すもん出して出来てんだぞ。体液なんて綺麗なもんじゃないだろ?けどさ、そこにお互いが思いやって幸せって気持ちがあるから、綺麗なものになるんじゃないのか?君が言ってる事も分からないわけではないよ。受け入れられない人は居るから。けどさ、それをネタに周りに同意を求める必要あるか?こんな大勢の前で話する事じゃないだろ。幸せの形なんて人それぞれだろ。自分がよく思わないからって、他人を傷つけて不幸にする奴は俺は大嫌いだ。最後に、俺の友達傷つけてタダで済むと思うなよ?」 陽介にどうどうと肩を叩かれながら、落ち着けと、椅子に座らされた。 思わずヒートアップしていたようだ。 冷静になって恥ずかしくなってきた。 言いすぎた、ごめんって謝ったらなぜかクラスから拍手が起きた。 余計に恥ずかしくなるからやめて欲しい。 陸と道が泣きながらありがとうって言うから、俺もありがとうって返した。 みんなが笑顔なのが良いのだ。 3人に今日は別で食べると伝えたら凄い勢いでなんで!?って言ってくる姿がちょっと面白かった。 斗真君と食べる約束をしただけだから、みんなに気を使ったとかじゃないよ。 あまり納得いっていない3人だったけど、陽介は彼女が一緒に食べようと誘われて出て行ったし、陸と道は、なら中庭行こうと言って出て行った。 斗真君はいつも食べてる所に行くらしい。 「斗真君。ここは立ち入り禁止なのではなかろうか?」 普通に屋上に来たけど、ダメだよね? やっぱり元から不良なのでは? 「先輩にここの鍵貰ったから大丈夫。」 「先輩はどうやって合鍵?手に入れたんだろ。」 何故か椅子も3個くらい有るし、灰皿も吸い殻が入って有るし。 斗真君は気にせず、焼きそばパンを食べ出した。 俺も弁当を開けて食べ始める。 良い天気だなぁ。 斗真君、食べるの早いよ。 2個目に突入してる。 「お昼はパンなの?」 「母さん居なくて弁当作ってくれないからな。」 「自分で作るとか?」 「俺に料理は無理だな。」 「慣れれば出来るよ?」 「進は料理するのか?」 「自分の分は自分で作るよ。家、出たいし、その時の為にやり始めた。」 あの家に俺の居場所が無いとは思わないが、やっぱり、父さんと母さんの距離を毎日感じるのは辛い。 「これも俺が作ったやつ。食べてみる?」 ネギたっぷり甘めの卵焼き。 お弁当の卵焼きは甘めがいい。 「食べる」 口を開けて待っているので、突っ込んでやる。 これは!あ〜んと言う奴では!? 意識しているのがバレないように、なんでも無いようにするけど、ダメだ…誤魔化せない。 思わず俯いてしまった。 「うまいよ。良い味してると思う。」 「あ、ありがと。」 卵焼きよりも甘い空気が流れているのは気のせいじゃ無いよな? 今日も一緒に帰る約束をして、席に戻った。 帰ろう鞄に教科書を詰めて居ると、陽介がやってきた。 一緒に帰ろうと言う陽介にごめんねと断ると、なぜか泣きそうな顔になった。 そのタイミングで彼女が陽介を呼びに来たので、背中を押して彼女に渡した。 優しく慰めて貰えばいいなぁ。 「良いのか?幼馴染と帰らなくて。」 「斗真君と約束してたし。あれ?俺一人で過ごす事探そうと思ったのに、斗真君と過ごそうとしてるね。」 駅まで10分。 けど、今日はこの辺でいい寄り道スポットを教えてくれるらしい。 寄り道スポットを教えてくれるって言ったよね? お店とか公園とかそんな場所を期待してたんだよ? それなのに、今は廃ビルの5階に連れてこられてる。 確実に不良の溜まり場だよね? 斗真さん!おはようございます!!って頭下げてる人たちを素通りしていく斗真君。 誰だお前って目がいっぱいで、落ち着かない。 メガネ外して、前髪も後ろに流して、制服も着崩してる斗真君。 学校が終わると不良に早変わり♫ あ、まつげついてる。 「ちょっとジッとして。」 取れたまつ毛を斗真君の手のひらに乗せてあげる。 「ありがとう。」 待って、その嬉しいって笑顔はずるい。 あああああ!! まぁーた、ドキドキするじゃ無いか。 こちらは誰ですか?と、不良さんに聞かれたので、クラスメイトの木下 進と答えた。 俺じゃなくて、斗真君に聞いてた? ごめんね、ドキドキが凄くて動揺したんだよ! 不良君達と話ししている斗真君の横で大人しく座ってた。 ここの掃除誰がしているんだろう? かなり綺麗にされてる。 あ、エロ本が有る。 みんなで回し読みするのかな? 冷蔵庫あるけど、電気通ってんの? 電気ついてるから通ってるのか。 あれ?廃ビルだと思ったけど違うのかな? 「てかさ、あ、ごめん。話ししてたね。邪魔した。」 「気にしなくて良いよ。なに?」 「不良漫画だって朝笑ってたけど、斗真君、不良だよね?」 「うーん、否定はしない。」 「だよね!あーダメだ。笑っちゃう」 確実に不良漫画の主人口じゃん! 面白い一面が知れて嬉しいわ。 笑いすぎだと言葉だけ怒られた。 顔は笑ってた。 結局、斗真君と不良さんと話してる内容は全く分からなかった。 俺の知らない世界だねぇ。 駅への道すがら教えてくれた。 もし俺に何かあったら助けてくれると約束してくれたみたい。 ありがたいけど良いのか? 昨日一緒に帰った時に会った人たちが、俺の事を不良さん達に伝えていたらしい。 なので、逆に斗真君に関わった事で身の危険に晒すことになったから、悪いと謝られた。 「斗真君と友達になれた事が嬉しいから、気にしないで欲しい。」 「そうか、ありがとう。」 「いえいえ、こちらこそだよ。」 今日は安全の為に家まで送ってくれると言う。 そこまでして貰っていいのかな? どうしようか悩んで、お弁当を作る事を条件にしたらめっちゃ喜んでくれた。 俺の降りる駅に着いて近所のスーパーで買い物をして、食べれないものとアレルギーを聞いといた。 アレルギーは無いけど、野菜が嫌いみたい。 特に椎茸とトマトが嫌いで、出されると殴りたくなるらしい。 素で不良じゃん。 また我慢出来なくて笑ってしまった。

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