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第7話

「見てください!これ!!」 「進さん!俺のも!!」 「進さんのおかげっすよ!!」 「親にめっちゃ喜ばれたっす!!」 次々に成績表を持って笑顔で見せて来る。 「おおおお!50上がってる!!これは35も!?苦手って言ってたのにすごいじゃん!!」 みんなの喜びに俺も釣られて嬉しくなる。 1ヶ月ぶりに廃ビル5階に入った途端に、この歓迎を受けたので有る。 待ち切れなかったワンコの様で可愛い。 俺よりでかいけど。 はっ!? 俺は気付いた! 周りを見渡す。 あああああああ!! 俺より背が低い奴が居ないよここ!! いや…まっ……みんな発育が宜しい事ですね。 若干遠い目になったわ。 「進さんどうかしましたか?」 「うーん、いやね、みーんなでかいなぁと。俺より小さい奴いねぇなぁと」 ハイテンションからの急速なテンションダウンに動揺したのか、みんなは慌てだしたが理由を聞き、大爆笑に包まれた。 おん?やんのか?おん? 下からでは睨んでも効果は無いようですね! これでも163cmあんのになぁ。 「東堂さんは進さんよりも小さかった気がしますよ?」 俺と同じくらいにここに来るようになったりんちゃんが何か知ってる!? 「りんちゃんちょっと詳しく。」 りんちゃんの手を引っ張り、ソファーに連れていき東堂さんとやらについて詳しく聞いた。 東堂さんとは、160cmくらいの女の子で高校3年生。 高校は有名な私学で、首席を取り続ける天才。そして斗真の婚約者。 ん? んんんんん? 何ですと? 斗真のこ・ん・や・く・しゃ? りんちゃんは東堂さんとやらをよく知っているようで、とても可愛く胸もデカイとか色々言っていたけど、他はあんま耳に残ってない。 婚約者。 それだけが残って俺の中でグルグル回っている。 前回の生理から今回の生理と病院の受診が終わるまでの間、斗真にどれだけ愛されているのか、大事に思われているのかを知った。 だからこそ……。 俺のまとう雰囲気に5階に居る全員が息を飲んだ音は静かに広がった。 そんな状況も知らない斗真が入ってきて、ただいまと俺に向かって両手を伸ばす。 いつもなら抱きしめて貰おうと寄っていくが、今の俺にはそんな気分はございません。 斗真の手を叩き落とし、東堂さんの事を聞いてみた。 何故、東堂の事を知っているのか?と聞き返された。 一気に冷えた空気に場が凍りつくのがわかる。 斗真の怒りがこの場に伝播していく。 りんちゃんがすいません俺が、すいません!とガタガタ震えながら謝っているがそうじゃない。 そう言う事じゃ無いんだ。 「斗真、俺はもしかして、りんちゃんがポロッと溢さなければ知らずに居たってことか?」 いつもと違う俺の雰囲気に気づいたのか、りんちゃんに向けて居た怒りをちょっとだけ収めて俺の方を向く斗真。 「俺は、不良の事情も何も知らないし、力になるわけでも無く足手纏いにしかならないから斗真が話してくれない限りは関わらないつもりなので何も聞く事はない。 それは前言ったよな?」 俺を怪訝そうにみながらも伺うように、恐る恐る頷きを返す。 「じゃあ、俺と斗真の関係は?」 「恋人です。」 「だよな?」 今度は強く頷き返して来る斗真。 「斗真の婚約者の話ってのは言う必要のないことなのか?」 「その事はもう終わっている話だ。」 終わってるからなんだ? 俺と斗真はただの恋人止まりで、これから先、家族になるのかなぁとか夢だったのか? そう思うと、視界がぼやけてきた。 「なぁ、斗真のお家事情は俺と関係ない? そこから繋がってる婚約者とやらは関係ない?俺は恋人で終わるのか?」 俺の言葉に、目を見開き驚いている斗真。 斗真と出会って俺には子宮があるって言う武器があるから、家族を作っていけるとどこか夢見ていた事が現実になると思えていたんだ。 それなのに……。 「恋人だけで終わるわけないし、終わらせる気はない!! その先の事も、全部考えている!」 「じゃあ何で言わないんだよ!?なぁ!?斗真が話してくれるまで待ってるよ? けどさ、こうやって第三者から聞く事だってあるわけだよな? 今の俺じゃ斗真の横に立つ資格は無いのか? 終わった事だからなんだよ。 何も知らないままで、過去のことなのか、現在進行形の事なのかもわかんないままなんだぞ?こんなつまんない事でケンカしたりすれ違ったりしたく無いんだよ。 この先も斗真と生きて行きたいって覚悟決めてるからちゃんと大事にしたいんだよ。 誰かが言ったから悪いんじゃ無くて、何も言わない斗真が悪いんじゃんか!! 言っとくけど、俺だって、調べようと思えば調べられるんだぞ? けどさ、そんな他人の口から出て来る言葉より、斗真からちゃんと聞きたいんだぞ?」 「ごめん。わかったから、進、泣かないで。」 抱きしめようと伸ばしてきた斗真の手を今度はちゃんと受け入れてやる。 俺の頭と背中に手を回し、抱きしめてくれる。 すっぽりと俺の身体は斗真の腕の中にはまって与えてくれる温もりと斗真の匂いとドクドクと脈打つ鼓動を聞いて少しずつ落ち着いてくる。 「斗真が俺の事を大事にしてくれる事は理解しているよ。 婚約者の事も俺の為を考えてくれた上で言わなかったことかも知れないけどさ、それでもちゃんと聞きたいぞ? 全部を聞きたいわけじゃ無い。 言えない事があるのもわかる。 けどこの先少なくとも関わる内容なら知っておきたい。 俺は大人しく囲われていたいわけじゃないからな。」 もぞもぞと斗真の腕の中から体を少し離し、真剣な顔で見上げてやる。 「俺は斗真が好きだ。 俺は男で、女じゃ無い。 そんなに弱くねぇぞ。」 自然と笑顔になった俺をみて、斗真も笑顔に。 「あぁ、そうだな、お前は男だよ。」 また抱きついてやるとぎゅっと抱きしめてくれた。

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