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第8話
ちょうど良いからと連れてこられた場所は見事な和風建築のお屋敷。
なぜ旅館に連れて来たのだ?という疑問は、いらっしゃいませ!ではなく、おかえりなさい!坊ちゃん!!と言う厳ついおじさま達の声で吹っ飛んだ。
バッと勢いよく斗真の顔を見れば、バツが悪そうに鼻の頭をポリポリ。
えええい!斗真が見せてくれると言うのだから全部見てやろう!
門を潜った先には見事な日本庭園。
手入れされた植木、大きな池もあるようだけど鯉が居るのかな?
見たいけど暗くてよく見えないし今は我慢だ。
こちらですと案内して頂き、とおされた部屋は何畳有るの?
ただただ広い和室。
端っこから1、2、3と数えてこの部屋30畳有るよ!?
襖には鶴が閉じると番いになるように描かれているのが可愛い。
お茶を出され、ふぅふぅして居るといかにも親分って風格の人が入ってきたんだけど。
斗真が歳を重ねたらこうなるのか!ってくらい似てる♪
思わず2人を見比べて納得してしまうよ。
「そんなに似てる?」
「うんうん、斗真の将来が見えたね!」
「ふは、楽しそうですね。」
「あ!ごめんなさい。俺は、クラスメイトの木下 進です」
お父さんに初めて会うのに挨拶もしてなかったよ。
斗真のお父さんは豪快に笑い出してる。
「はっはっはは。斗真にこんな顔をさせるとはな。進君か、俺は斗真の親父で、松木 誠二(まつき せいじ)だ。」
「親父、俺は進とは結婚前提の付き合いをして居る。」
突然何を言うの斗真!?
お父さんの顔が一気にヤクザの親分に変わっちゃったよ!
「本気か?」
どすの利いた声で、斗真に聞く様はめちゃくちゃ怖くて、思わず斗真の手をギュッてした。
「あぁ本気だ。」
俺の手をしっかりと握り返してくれる斗真の手があったかくて、2人一緒なら怖く無いって思っちゃったんだ。
「俺はこんな見た目で男で、それでも斗真が好きなんです。斗真君を幸せにするんで、斗真君をください!!」
あれ?なんか変な事言った?
全員の目が俺に一斉に向いたんだけど?
「くくっくくっく」
「はっはっはは」
斗真もお父さんも笑い出したけど何?なんなの!?
「進さ、俺を嫁にもらいに来たの?」
肩を震わせて、涙を拭いながら斗真が言うけど。
「へぁ?」
斗真が嫁?
あれ、俺なんて言った?
ボン!!って言う効果音、あれ正解です。
俺の顔も真っ赤だと思うけど、もう全身が真っ赤になってる自信あるよ!!
「じゃあもう俺が嫁で良いです。子供も産めるしね!!」
「あっはっははは!そっちの方が俺は嬉しいです」
そんな笑う事ないじゃんか!
睨んでやるけどちっとも効いてない。
「子供?」
お父さん困惑するよね。
言っちゃって良いのかな?
気持ち悪いって。
斗真が頭を撫でてくれて、落ち込みかけた気分を直してくれる。
もう一度、お父さんに向き直って説明をしていったんだ。
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