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第15話
おいしかったお茶が、おいしかった煎餅が一気に味が無くなったよ?お義母さん。
「斗真が1番ヤバイのはねぇ。」
楽しそうに斗真の話をしてくれた。
婚約者の東堂さんの話から始まった。
斗真と同い年で産まれた東堂さんは、お義父さん達の間で、将来結婚したら面白いなぁくらいの酒のつまみ程度の話から始まった事だったらしい。
それを何度も聞かされて育った彼女は、本当に斗真の婚約者だと名乗り相応しく有ろうと努力していたのだ。
大人達はまぁ、不都合があるわけでもなく本人達が望むなら好きにすれば良いと考えて放置して居たのだ。
そんな時俺の登場で、どうして私という婚約者が居るのに何を考えているんだ!と怒った彼女がこの家に父親と一緒に乗り込んできたらしい。
「彼女は斗真との結婚を真剣に考えていたのよね。それ程まで考えてくれて居たみたいなんだけど……。斗真を愛している訳では無さそうだったのよね。」
「どうしてですか?釣り合う為に、努力して成績も優秀って聞いてますよ?」
「なーんて言ったら良いのかなぁ〜?」
お義母さん腕組んで考え出しちゃった。
ちょっと急須にお湯入れよう。
「もう座ってて、私やるから」
横からお義母さんに急須取られちゃった。
座り直して、毛布の肌触りの良さを体感しつつ、お義母さんの話を待つ。
「あれだわ。斗真を愛していると言うより、この家の嫁っていう立場が欲しいって感じだったの。だから、斗真の為に頑張ったって泣きながら言うんだけど私、白けちゃって。斗真のあの時の顔なんて、進ちゃん見たら卒倒しちゃうわよ。」
あはははって笑いますけど、お義母さん?
斗真の顔どうだったの!?
「気になる?」
「う、うん。もちろん気になります」
「ヤクザのお父さんや、その連中達が、ビビるほどの顔つきだったの。いや〜本職がビビるってどうなのよね」
膝をバンバン叩きながら笑いますけどね?それ笑えないよ?
「でもその顔は見たこと無いから、想像がつかないなぁ。斗真はいつも優しいからなぁ。」
「進ちゃんには向ける訳ないわよ〜。本気で斗真が進ちゃんを愛しているんだから〜」
お義母さんに言われると恥ずかしい〜!
「それでね、」お茶を注ぎおわったお義母さんが話し始めた。
斗真は東堂さんに対し、『好きな相手が居るので二度と婚約者だと名乗るな、お前が欲しいのは俺に着いてくるブランドを手に入れたいだけだろ?今まで俺の婚約者だと語って好きにしていたのだからな。何も、俺が、知らないと?』
東堂さんに詰め寄り、言い放ったらしい。
「それを言った時の斗真♪本職よりもヤクザの顔してたのよ〜お母さん痺れちゃったわぁ」
まま〜帰ってきて〜うっとりとして頬が朱いよぅ。
「で、その後に彼女がやらかしたのよ」
俺を拉致する様に指示を出した。
しかも依頼した相手は、お父さん達の部下。
つまりは、ヤクザに俺の誘拐をするように指示をだしたのだ。
お義父さんの一家はヤクザ家業では珍しい程、仲が良いらしく、彼女の身勝手な思いで、同じ一族の息子の好きな人を危険に晒すような裏切り行為など許されるはずがない。
「指示を出されたのは、彼女の身の回りの安全を守っていた下っ端だったの。本来なら護るべき対象からの指示なら聞かなきゃいけない。けど、自分の命を捨ててでもやってはいけない事だと思った1人が相談に行ったのが、うちの一族の本家の人間だったの。」
本家からは両家共呼び出しをされた。
話を知らなかった東堂さんは怒り狂い、彼女にビンタを数発入れ、詫びの為に小指を落とそうとしたらしい。
けれども、事が起こる前という事も有り、今後一切、俺と斗真に関わる事が無い様にする事で貸しにしたらしい。
ただ、指示を受けたままの数人はそんな話になっているとは知らずに俺に近づこうと高校辺りでいる所を斗真に見つかり締められたと。
「全然知らなかった。斗真言ってくれなかった……。」
「ふふっ言ってくれなくて寂しいって感じね。話を聞いて怖いとか、ヤクザは嫌だとは思わないの?」
「うーん、ヤクザは別に嫌だとは思わないかな?さすがに内容は怖いとは思いますけど、その辺は斗真が守ってくれるかなって。それより知らなかった事の方が、やっぱり寂しいですね。言って欲しかったなぁ。」
「ふふふっやっぱり斗真が選んだ子だわぁ〜。なによりも斗真が1番って感じね。」
「そう…ですね。お義母さんと同じかも。斗真が不良でも、そうじゃなくても。家がヤクザでも、そうじゃなくても、なんでも良いですね!斗真が好きなので、それも斗真の一部分だと思うから、気にならないですね」
そこよ〜そこそこ〜とお義母さんは俺の頭ををグリグリと撫でくりまわしてくるけど、お義母さん!力が強いです!!
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