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風邪ひきました2
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妙にリアルな夢を見た。
ユキが多分優しい言葉をかけてくる。なんて言ってるかはわからない。でも、耳元をくすぐる吐息が心地よく、風邪引いて寝込んでるというのに、俺は自分自身に徐々に熱が溜まっていくのを感じていた。
ユキの手が俺の身体を撫で回し、そういえば裸のまま寝てたなぁ、なんて思った。
また何か言う声が聞こえた。
ユキの少し冷たい手が、俺の胸の突起をギュッと摘む。イッテェなこの野郎と思ったが、いつものことだし慣れたもんだ。
熱のせいか、本当に生々しい夢だ。せめて夢の中でくらい、もう少し優しくして欲しい。言葉だけじゃなくて、行動も。
「オラッ!起きろよ!」
バシィィンと、頬に衝撃が来た。
「ふぇ!?」
「ふぇ?じゃねぇよ!!いい加減起きろよ!!」
驚いて痛みは感じなかった。何度か瞬きすると、ニタニタと笑うユキと目があった。
同時に、ケツに感じる違和感。
「なっ、なんで!?」
「オレがタダで優しくしてやると思ったか?バーカ!!」
「っ、んん……っ、ちょ、へ?」
ユキは俺に覆い被さっていた。ちなみに優しくもクソもない言葉を投げかけられていた。夢って都合のいいように現実を改変するんだな……
つか、なんだこれ?
「お、おい……何?」
「ドッキリ企画」
「……は?」
思わずユキを突き飛ばそうとして、でも腕が動かない事に気付いた。ご丁寧に頭の上で縛ってある。
「優しさからの無理矢理される気分はどうだ?一回やってみたかったんだが」
「ちょ……えぇ?」
「お前さぁ、ちょっとオレのこと好きだとか思ったろ。そういうのわかんだよなぁ、昔からさぁ」
ビクッと身体が震えた。バレてんじゃん。
「まあいいんだけどな?オレもお前のこと気に入ってるし……ってことで、何してもいいよなぁ?」
ど、どういう解釈をすればいいのか?
戸惑う俺を嘲笑うように、ユキは俺のケツに入れたデケェ凶器を乱暴に動かし始める。
「んんっ、や、やぁっ……」
「オラッ!やじゃねぇだろ、このクソニート!!」
「それはお前もな!!っ、はぁ、ぁあ」
「もっと声出せよ!!」
「っ、お前はうるせぇよ!!」
ギシギシ鳴るベッドと、グチュグチュと卑猥な音が規則的に鳴り響き、時たまユキがヘラヘラ笑いながら俺の頬を叩いたりした。
「もっ…イく…、ぅひぁ…叩くなバカ」
「イケよほら!」
「ぁあ!?」
両膝の裏に腕を回し、ケツを持ち上げられると、より深くを抉るように犯される。
ヤベェ…最高なんだけど…
とか思っている俺は熱のせいで……違うな、熱じゃなくてもおかしいわ。
ユキが俺の首に噛み付く。痛みと共に、盛大にイッた。ほぼ同時にユキの熱い液体が腹の中を満たした。
「ぅあっ……はぁ、はぁ」
「はー、最高」
「死ねよ……何だよドッキリ企画って……」
「安心し切って寝てる弱った人間の寝込みを襲う企画」
「いや説明しろってことじゃねぇ!!」
頭おかしいだろこんなん。
最高じゃん……じゃなくて、
「なんだよ企画ってさぁ、ユーチューバーか!?動画撮影か!?って、そんなわけねぇわな。誰がこんな男同士やってるとこ見て喜ぶんだよ。つか一発バンだろこんなもんアップしたら」
全く、すぐ最近の流行に乗ろうとすんだから。
まあ、需要がないわけじゃないだろうけど、進んで晒したいもんでもねぇよ。
ああ疲れた。風邪ひいてんのに。
…………あれ?
「ユキこのクソ野郎!!ガッツリカメラセットしてんじゃねぇよ!!」
「あれー?バレた?」
バレるも何も、テーブルの上にしっかりカメラがセットしてあった。ご丁寧に三脚付きで。
「オレらもこれで稼ごうぜ!ほら、なんたらルーティーンとか」
「やらねぇよ!流行ってたけども!」
「動画説明欄にBLって入れるだけで稼げるらしいぜ」
「視聴者数だけな!?」
なんなんだよコイツ。マジで何考えてんのかわからんところが怖いわ!!
えー、と、ションボリしながら、ユキは俺のケツに入れたままだったものを引き抜いた。ドロっと液体が漏れる感触に身震いして、そんなところもカメラに撮られてんのかなと思うと、なんかちょっと興奮する。
「そのカメラどうしたんだ?」
ユキは俺の腕の拘束を外し、カメラを手に持って隣にゴロンと横になった。
「マキが寝てる間に買って来た。お前の金で」
「……はぁ」
多分昨日の稼ぎはこれで消えたなぁ。まあいいや。
「見る?」
屈託のない笑顔って、こんなやつのこと言うんだろうな、という顔でユキが言う。
ちょっとでも好きかもなんて思った俺は、一体何を考えていたんだろう。きっと熱のせいでおかしくなっていたんだ。
「見る」
「だよな」
「うん」
そんでもって俺も、案外こういうプレイが好きだったりする。
似た者同士ってこと…なんだよな、結局。
その後ユキはバチが当たったのか、三日ほど熱を出して寝込んだ。
バカも風邪引くんだなと思った。ザマァ!!
動画はどうなったかって?
……もちろん観賞用にしっかり保存したぜ!
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