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フリーダムウィーク2
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待ち合わせの後連れて行かれたのは、駅から少し離れた、殺伐とした空気が漂う建物の中。
休憩2500円、宿泊5000円とか書いてあるあの建物だ。
受付のタッチパネルをピッと押すユキの手つきは、どうしたものか慣れている。
「俺さ、こういうとこ初めてなんだけど」
「そりゃ良かった。これが庶民の憩いの場だ。時に困った時の宿になり、時にこの世の楽園となる」
「……クスリでもやってんの?」
俺の問いかけは、キレイにスルーされた。
赤い絨毯が敷かれた廊下を歩く。壁が薄いのか、時折男女の喘ぎ声がした。
「つかお前それでラブホ初めてとか、マジか?」
「マジだよ。いつもは高級ホテルとか連れてってもらうから」
「うわぁ、ボンボンはケツ破壊されて人工肛門になればいいのに」
「恨みの度合いがスゲェな」
俺の自慢は、今までの相手がけっこう裕福だった事だ。もともとオヤジの仕事相手や、その息子と関係を持つ事が多かったからだが、そのおかげで金は貰えるし旨いものは食えるし最高だった。
その後にどんな鬼畜なプレイが待っていようが、それもまたお楽しみというわけだ。
経験上、金持ちほど人道に反するような、小学校のとき道徳の授業きいてなかったのか?みたいなプレイが多い。
ある時何度かヤッた相手から、「これを受けっとてくれ!君のために特注したんだ!」と言われ渡されたのが、尿管ブチ抜くタイプのピアスで、尿道口にガチモンのダイアが来るようになっていたのには本気で焦った。
しっかり受け取って、それ以来会ってない。後日質屋に売りに行ったら、店員がゾッとした顔で俺の顔と股間を交互に見ていたのがとても恥ずかしかった。
そんなわけだから、壁の薄さや微妙な壁の亀裂、絨毯の擦り切れ具合、あと、入った部屋のいかにもな感じに俺は戸惑った。
「ほんとに風呂丸見えなんだな」
「こんなところで、裸気にする奴なんていないぜ」
「そうだよな…」
入り口に突っ立ったまんまの俺に、ユキはにっこりと笑いかけてくる。
「筋肉は好きか?」
「は?」
何度か瞬きをして、ユキを見つめる俺。
筋肉、とは?
「今日は『フリーダムウィーク』記念すべき1日目なわけだけど」
「あ、ああ、そう?だな」
ユキはそっと俺の手を引いて、ベッドまで誘導する。ストンと座らせられ、ますます意味がわからない。
「お前さ、良く風呂上がりのオレを見てるだろ?」
「そりゃ良い身体してんなと思って。おんなじ男なのに、俺は昔から筋肉はあまりつかない」
あ、俺今自分で筋肉って言ったわ。
ユキはニヤッと笑った。
「そこで今日は、お前の好きな筋肉を呼んできた」
「俺は別に筋肉そのものが好きなわけじゃないんだが」
ユキはまた俺をスルーした。
「ちょっと待ってて」
そう言って、ユキは俺のスマホ片手に部屋を出た。俺の、スマホ……しゃあねぇ、明日にでもスマホ買ってやるか。
十分ほど、俺は備え付けのテレビで、男と女が絡み合う映像を見ていた。
女ともセックスはできるけど、あまり楽しいものではない。それに演技ッポい声を出されると萎える。
家でユキが撮った俺のフシダラな姿の方が、女のそれより幾分かマシだ。なんて、AV女優に失礼な事を考えていた。
「おまたせ」
自分でもわかる冷めた顔でテレビを見ていたら、ユキが戻ってきて言った。
その背後には、俺やユキより背が高く、ガタイのいい男がいた。そうとう鍛えているのか、張った胸板が浮かぶ白いTシャツや、力強さを全面的に押し出した二の腕がなんとも言えないなんかそんな気分にさせてくる。
「あー……どーも」
「チワッス」
挨拶と同時に光る白い歯が、なんかちょっと怖い。
「コイツはマッチングアプリで知り合ったリョウゴくん。今日はお前のためにちんこ貸してくれるって」
「俺のスマホでマッチングすんな!!」
ユキはリョウゴに何事か耳打ちし、それを聞いたリョウゴはにこりと笑って頷いた。
「すみません、はじめましてなのに」
「いや、こっちこそユキがなんかごめん。その、ヤればいいんだよな?」
ユキを見ると、ゲスい顔ですでにアソコを膨らませている。もうダメだ、コイツ。
「シャワー浴びます?」
「俺は家で入ったけど、あんたは?」
「自分、さっきサウナで流してきたんで」
どうしよう。空気感が掴めない。
リョウゴはけっこう若そうだった。悠哉と同じくらいの歳だろうか。爽やかな青年は、果たして俺を……じゃないな……ユキを満足させることができるのだろうか。
「じ、じゃあ、好きにしていいから……どうぞ」
「あっ、スンマセン!おれ慣れてなくて……」
慣れてない奴がマッチングアプリすんな!!と思うが、まあ、いいや、この際。
「ベッドに座ってくれる?」
「あ、はい」
たまには俺がリードすんのもいいだろう。特に最近は、ユキに好き勝手されているし。
リョウゴはベッドの淵に腰掛け、緊張したように身体を硬らせていた。
「んな緊張すんなよ。俺まで緊張しちゃうだろ」
と、心にもない事を言ってやる。ユキが背後で笑いを堪えているのがわかった。
「すみませんっ」
「口開けて舌出して」
「は、はい」
着ていたTシャツとデニムを脱ぎ捨て、リョウゴの前に立つ。少し震える舌を巻き込むように、俺はオカマバーで鍛えた官能的なキスをした。
「んふ…はぁ……ん、む」
わざとらしい声を出す。ユキなら気付くだろう。でも、リョウゴは気付かない。
「はぁ……」
糸を引いて離れた唇を、リョウゴは恨めしげに見つめる。
「フェラされた事ある?」
「い、いや、無いです」
「そ。じゃあ、俺が忘れらんないくらいのやったげる」
リョウゴのデニムは、すでに少し膨らんでいる。ベルトを外し、ジッパーを下ろして、デニムと下着からちんこ登場。
思わず喉がヒクッとした。ガタイが良いからか、リョウゴのそれは半分元気な状態でも十分大きい。
「っふ……」
完ダチしたら、俺の口に収まらないだろうなぁ、なんて考えながら、口に含んだそれに唾液を絡ませながら舐める。先から根元まで咥えようとするが、やっぱり無理だ。
「ひもひぃ?」
男ってなんで咥えながら話されるのが好きなんだろう?とか考えている俺は、あざとい女と一緒だ。クソビッチと言われても仕方がない。
実際そうだし。
「マ、マキさん…好きにして良いんですよね?」
ちんこを咥えたまま頷いて答えてやる。と、リョウゴの雰囲気が変わった。
「んぶっ!?」
唐突に、リョウゴが俺の頭を両手でしっかり固定して、腰を打ち付けてきた。
「グフッ、んん…んっ!……オエッ…んふ!」
リョウゴの足を叩いたり、腕を掴んで抵抗するが、全くびくともしない。力強すぎ。苦しい。吐きそう。息ができない。マジで死にそう。
「マキさんっ、最高ですっ!!」
「んぶっ!?」
ドクンと脈打つリョウゴのそれが、俺の咽頭の奥に精液をぶっ放した。
「っ、はっ、はぁ、オェエッ」
ゲロった。ガチで。胃液と精液しか出なかったけど。
「はぁ、はぁ、マキさん本当にインランなんですね」
今まさにゲロって萎えてる俺に、インランとは?間違ってんぞ、と指摘してやりたい。
が、リョウゴは止まらない。ちんこの裏にでもブーストスイッチがあったようで、俺はそれをそうと知らずに押したようだ。
グイッと腕を掴まれ、ベッドの上に放り出される。パンツを剥ぎ取られ、見下ろされるとイヤでも興奮してしまう。
「マキさんっ」
「ふぁっ!?」
大きな掌で半分勃ってるそこを握られた。先走りを絡めて上下に動かされると、快感がジワジワと広がっていく。
リョウゴは、右手を動かしながら俺の胸の突起を舐め回す。時々吸いつかれると、自然と腰が動いてしまう。
「あっ!!」
突然の声に、俺は驚いてビクッとした。リョウゴが手を止めて、声を上げたユキを見た。
「忘れるところだった」
「はあ?」
今いいところだったのに、ユキのせいで台無しだ。
「オレさ、お前にも筋肉つけてやろうと思ってさ」
「……は?」
いよいよ理解が追いつかない。
「最近は登山家も使うらしいぜ」
と、ユキがカバンから取り出したのは(つか、こいつずっとカバン持ってるから気になってた)、貼りつけて電気刺激で鍛える系のアレだった。
「これ貼ってセックスしたら、お前でもちょっとは筋肉付くんじゃね?」
「死ね!!!!」
思わず叫ぶ。が、ユキはどこ吹く風といった顔で近づいてくる。
「俺、別に登山したいとか言ってないんだけど」
「あはっ、今やってんじゃん……絶頂ってヤツに、登り詰めようとしてんじゃん」
「お前マジで頭大丈夫か?」
もう意味不明過ぎて、俺が考える事を放棄しそう。
その間に、リョウゴがベッドサイドにあった使い切りのローションを開けて、どろっとした液体を俺のケツに塗りたくった。
「ま、マジでそれ貼んの?」
「そのために買った。お前の金で」
ユキといたら、オヤジの遺産がどんどんなくなっていく。ま、それはそれでいいか。
ユキがパッドに専用のジェルを塗る間、リョウゴは俺の尻の穴の拡張を始めた。ゴツゴツした指が2本、軽々と穴を出入りする。そのなんとも言えない快感に、ユキのことなんて忘れそうになる。
「あぁ、ん…そこ、いっ、ぁああ!!」
「ここですか?」
「んっ、ふぅ…あんま、強くしないでっ……いやぁっ!」
3本に増やされた指が、尻の穴の中をグネグネと動き回り、俺の良いところを的確に刺激する。ちんこの先から、ビュルビュルと透明な液体が漏れているのが目に入り、それがまた快感を増幅させる。
「できた!」
「ん、?」
ユキがまた叫ぶ。もう、誰かコイツを黙らせてくれ。
「マキがムキムキになったらどうしよう」
「知ら、ねぇよっ、ぁあっ…やば、も、出そっ」
腹部をひんやりとしたジェルの感覚が覆う。
「スイッチどこ?」
「あ、ユキさん、ここ押してください」
「あぁここね」
「最初は弱からの方がいいですよ」
「そう?じゃあ、これでいいかな」
説明書くらい読んでこいと言ってやりたい。が、そんな余裕は一瞬で消えた。
腹部になんとも言えない刺激が加わった。
「うああっ!?ぁがっ…ひゃぁ」
なんと言えばいいのか、ギューっと勝手にお腹が縮む感じというか、つか、これ気持ち良いのとか関係なくね?
「マキ!腹筋!」
「う、うるせぇ!!っぁあ!?気持ち悪いぃぃ」
「リョウゴくん気持ち悪いって」
「お、おれですか?」
オメェだよ!!と、言いたいけれど、言ってもムダか。
「マキさん、そろそろ挿れますね」
「ん、いいぜっ……ぁぁあっ」
リョウゴのゴリゴリしたものが、俺の直腸を容赦なく抉ってくる。同時に、腹部にも刺激が来た。もうわけわかんねぇ。
「マキさんっ!!」
「うひっ、ちょ、もっとゆっくりっ!!」
ユキのねちっこいセックスとは違って、リョウゴはまるで獣のように、容赦なく小刻みに腰を振る。それに合わせて、俺は自分から腰を揺らしてしまうのを自覚して、そんな所をユキに見られているんだと思うとたまらない。
「んっ、ああっ、ん……イッ、イッチャ……ヒグッ!?」
また腹部のパットから電気刺激が来る。正直に言うと……とても邪魔だった。
アダルトグッズならまだしも、テレビCMで見るそれは間違いなく健康器具であって、こういう時に使うもんじゃない。
もうヤダ。
「ふぐっ、ぅ、うう……」
「あ…あの、ユキさん。マキさん泣いてますよ」
「ほんとだ!」
慌てたユキが俺の顔を両手で包み込むようにして覗き込んできた。とても焦った表情だった。
「ど、どうした?オレ以外とすんのがそんなにイヤか?」
この期に及んで勘違い甚だしい。
「ちっげぇよ!!お前のせいでっ、楽しめないだろーが!!!!」
「えぇ、そこ?」
「そうだよ!外せよコレ!邪魔なんだよ!!」
「3万くらいしたのに」
「死ね!!!!」
せっかくのゴリゴリちんこが、定期的に来る微妙な刺激のせいで味わえない。そんなこと許さん。
「いいから外せっ、ぁうっ…!」
「わかった、わかったから泣くな…そんな顔されるとオレのちんこが爆発しそう」
「そんなもん爆発してしまえっ!!!!」
ユキがショックを受けた顔をした。それから、泣く泣く健康器具の取り外しにかかる。
外し終わると、ユキがパッドを持ったまましゅんとした顔をする。
それを無視して、俺はリョウゴの腕を引いて言った。
「邪魔なもんなくなったからさ、今度こそ楽しめるな」
「は、はいっ!!」
「もっと動いていいぜ。女には出来ないような、ヒドイ事してもいいし…ってか、激しいヤツやってくんなきゃ俺は満足できねぇ」
言うや否や、リョウゴが覚醒した。太い腕で強引に身体を反転させられ、後ろから思いっきり、それこそ背骨や内臓を直接内側から叩かれるみたいに腰を動かし始めた。
「ああっ…激し、うあ……んん!」
「マキさん、最高です!!」
ガクッと腕から力が抜ける。すると、リョウゴが俺の両腕を掴んで後ろに引いた。肌と肌がぶつかる音がより大きくなり、その分だけさらに奥を責めてくる。
「んっ…!で、出る…内臓出るぅっ……」
「出しちゃってください!!」
いや出たらヤベェだろ!?とか思うが、リョウゴは今頭真っ白なんだろうな……
そんな俺は、冷静にツッコめるくらいには正気だ。だって、普通のセックスに思考までバカになるわけないだろ。
と言うくらいには、アブノーマルなプレイに慣れてしまっている。
まあ、気持ちが良ければそれでいいし、確かにリョウゴのちんこは最高だった。あくまで、普通のセックスなら、だけど。
「マキさんっ、もう、イキそうですっ!!」
「ん…俺ん中いっぱいにっ、うぁ……出せよっ!」
「はいっ!」
「あっ、あぁ…んっ!!」
リョウゴが一際大きく腰を打ち付け、ビュクビュクと腹の中で脈打った。熱い体液が腸の中に広がる。俺もイッた。ポタポタと白いものを垂れ流し、ドサリとベッドに倒れる。
荒い息を吐く。それから、そういやリョウゴのがまだ元気だな、と気付いた。
「はぁ、はっ…もっかいヤッとく?」
ニヤリと笑ってリョウゴを見やる。俺の中でちんこがビクッと返事した。
それからリョウゴは、ノンストップで俺の中に三回出して力尽きた。ゴリゴリちんこ最高。
ユキはベッドの横で、そこをパンパンにしてただ見ていた。
少しでも嫉妬ってのが理解できたのかは、不明だ。
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