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まずは胃袋から4

★  夕食後の事だ。  ユキが先に風呂に入り、俺は暇な時間を過ごしていた。  うちにはテレビなどと言う、バカほど電気代を使う家電は存在しない。  退屈を苦痛だと思ったことはないから(退屈が苦痛なヤツは働け)、タバコを咥えてベランダに出る。部屋の中は冷房が効いているが、外に出るとやっぱり暑い。  夏は嫌いだ。無気力な俺にとって、何もしていなくても汗をかく季節は敵だ。 「マキ、風呂入れよ」 「んー」  例の如くパンイチで出てきたユキは、薄ら水滴の残る首にタオルをかけて、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出した。  プシュといい音を立ててプルタブを開け、液体を喉に流し込むように飲む。喉仏が上下する様は、なんだかエロい。  完全に欲求不満だ。 「うめぇ」 「おっさんかよ」  そう言ってから、俺も風呂へ向かった。  エリカちゃんに言われた通り、ダメ元でも一回正面から言ってみようかな、なんて思った俺は、風呂でしっかり準備をしてから上がった。  そこが単純でバカ、すぐヤレるとか言われるとこなんだが、まあその通りなので言い訳のしようもない。  風呂から上がると、ユキは二本目の缶ビールに口をつけていた。そういえば、知り合ってからユキが酔っ払っているところを見たことがない。 「マキも飲むよな?」  ユキが俺に気付いて、立ち上がって冷蔵庫へ向かう。が、俺は首を横に振って断った。 「どうした?マキが飲まないなんて変だぜ」  ユキがものすごく怪訝な顔をして俺を凝視する。  酒を断ると逆に心配されるのだ、俺が普段からどんだけ酒飲みかがわかるだろ? 「あのさ」  いつになく小さな声が出た。  ユキは立ち尽くしたままの俺の前まで来ると、俺の首にかけたタオルを取って言った。 「なんだよ?頭乾かして欲しいの?」 「オメェはお母さんかよ!?」  思わずいつものようにツッコんでしまった。  そうじゃないだろ、俺!! 「じゃあ何?」 「えっと、その」 「あ!悪りぃ、今日はお前の好きなチョコアイス買ってねぇや」 「マジかよ!?なんだよ先言えよ!!」 「だからごめんって」  さっき言ってくれたら買って帰ったのに!!  ……っじゃねぇ!! 「えーっと、あのな?その…」  俺いつもどうやって誘ってたっけ?もっとこう、オープンなアレだったハズなんだけど、なんで言葉が出て来ないんだろう。 「ホントにどうしたんだよ、マキ?」  ユキが俺の顔を真っ直ぐ見ようとするから、まともに顔を上げていられない。  もしユキに新しい男(或は女)がいたら、誘った所で断られるのか?……しゃあなししてくれるか、ユキなら。  イヤだなぁ……それはそれで。なんて、思ったのは初めてかもしれない。  でも俺も男だ。めっちゃヤリたい。ちんこ爆発しそう。  俺は覚悟を決めた。 「ユキ…俺、めちゃくちゃヤリたいんだけど」  散々悩んでたのに、我ながらド直球だなと思った。その割に声が震えた。  カッコ悪りぃなあ俺。 「マキ……オレさ」 「待って!俺に飽きたならそう言ってくれ。別に出て行くなら好きにしてもいい。でもウソだけはつかないで欲しい」  ユキは真剣な表情だった。だから思わず、終わったなと思った。今までの経験上、相手が真剣な顔をする時は関係が終わる時だ。  新しい恋人ができた、ならまだ気持ちの整理も付きやすい。もともと淡白な方で、熱しやすいけど冷めるのもはやい。  でも、結婚する、というのが俺的に一番キツイ。男同士ではできないからだ。もちろん男同士でも方法はある。あるけど、様々なハードルを超えてやっていけるとは思えない。そんなもんに耐えられるメンタルがあるなら、俺はとっくに就職して社畜にでもなってる。 「マキ、」 「いやちょっと待って!!出てってもいいけど、やっぱり最後に俺をめちゃくちゃにしてくれ!!何してもいいから…お願い……」  あー、涙出そう。こんなにも、別れがツライと思ったことはない。だって俺の為に、料理してくれるヤツなんていなかったから。 「ホントに何してもいいのか?」 「え?ああ、俺が耐えられるヤツならなんでも……」 「出てくつもりはないけど、ホントに何してもいいんだよな?」 「……出てかないの?」  パッとユキの顔を見る。多分、俺の顔はニヤケてる。恥ずかしい。その言葉が、こんなに嬉しいとは思わなかった。  向けた視線の先、ユキは……あれ?なんかものすごい悪い顔で笑ってらぁ。 「当たり前だろ。こんな可愛いマキを手放してたまるかよ」  そう答えて、ユキは俺の口を塞ぐ。唇を舐めるように舌が這い、ボケッとしていた半開きの俺の唇の隙間を、捻じ込むようにユキの熱い舌が侵入して来る。 「んふ…っふ……んん」  ユキは左腕を腰に回し、右手を後頭部を覆うように沿わせ、まるでお互いの全表面積が密着していないと気が済まないかのように、俺を優しく抱き寄せる。  そのせいでちんこがちんこと擦れる。ヤベェ。  俺はユキの腰に両腕を回し、長過ぎる深いキスに耐えた。ユキのキスは、口から内臓でも吸い出すみたいに強引だ。 「っはぁ…マキ…ごめんな、最近かまってやれなくて」  唇が名残惜しげに離れると、ユキが申し訳ない、という顔で言った。  知り合ってからもうすぐ一ヶ月。  当初はヤッてる時以外にも過度なスキンシップがあって、俺はちょっとウザいなと思ってたけど、家事をちゃんとするようになってからは、そんなのも無くなっていた。  追い出そうとイタズラしていたのも、なんだか懐かしいと思えるくらいに、久々の濃厚なスキンシップだった。 「いや、それは別にいいんだけど……」  ウザいと思っていても、不安になるのならウザいくらいのスキンシップがある方がいいのかもしれない。  自分で自分の性格が、ものすごく面倒だなと思う。  だけど、エリカちゃんが言っていた通り、相手の気持ちを聞くだけではダメだ。俺も言わなければ。  面倒な俺の気持ちを、ユキに言わなければ。 「急に全然ヤんねぇから、他に好きなヤツでもできたんかなって……ちょっと不安だった。まあ、俺たち別に、付き合ってる訳でもねぇけど」  そう、結局俺たちは恋人ってワケじゃあない。ユキは俺に時たま好きだと言うが、セックスしないのに好きってなんだ?と思うわけだ。 「じゃあ付き合う?」 「え?」 「オレはマキが好きだぜ。というか、あんまりにもお前の側が居心地良くて、付き合ってるって勘違いしてたわ……そうだよな、言わないとわかんねぇよな」  ごめんな、とユキがはにかんだように笑う。  俺の頭は混乱した。そもそも人よりも処理能力低スペックの俺の頭だ。ユキの言葉を理解するのにも時間がかかる。 「じゃあなんで最近ヤンなかったんだよ?」 「それはほら、オレはずっとマキに必要とされたいから、セックスばっかじゃあダメだと思ってさ…料理とかやってみてた。オレ的に結構必死だったんだぜ」  なんこれ?自分の心臓がバクバクしてうるさいんだが…… 「そう、か……」  良かった。好きなヤツができたとか、出ていくとか言われたらどうしようかと思っていただけに、それとは真逆のユキの気持ちが聞けて正直嬉しい。 「って事だから、オレはもうマキを恋人って言っていいんだよな?」 「お、おう」  照れ臭い。顔が熱い。ユキを見ると、ユキも顔を赤くしている。  俺は26にして初めて本当に恋人ができたのか。実に感慨深いな。 「オレ、ちゃんと大事にするからな?」 「あ、うん」 「おいで、マキ」  手を引かれ、ベッドに押し倒されると、それだけでいつもより満たされていると感じる。期待にちんこ……じゃなくて胸がいっぱいいっぱいになる。  なるほど。これが俗に言う、両想いだとよりセックスが気持ちいいとかいう、アレか。 「マキ……」 「ん、ふぅ…」  またも重ねられた唇に、絡み合う舌の熱さに、剥き出しの肌に触れるユキの掌に、すでに硬くなったそこは体液を滲ませている。  ユキの大きな手が、スルッと俺のパンツを剥ぎ取って、そのまま包むようにそれを握る。 「はっ、あぁ…ユキ…もう出そうなんだけど」 「どんだけ我慢してたんだよ?」  そう言ってちょっとゲスっぽく笑う顔がたまらなく好きだ。 「一回出せよ」 「んん、はぁ、ああっ…ちょ、あんま強くすんなよっ」  いきなり激しく動かされ、グチョグチョと卑猥な音がする。久しぶりの刺激に、俺のそれは今にも爆発しそうだ。 「うう…っは、も、イくって……っんん」  ビュルっと粘着質な白い液体が、勢いよく飛んだ。思わず腕で顔を隠す。ちょっと触られただけでイったなんて恥ずかし過ぎる。 「めっちゃ濃いぞ」 「うるせぇよ!」  腹の上に飛んだものを、ユキが指ですくう。あー、ダメだ。死にそうなくらい恥ずかしい。 「も、ケツに入れろよ」 「フハハ!マキはそう言うことはズバッと言えるのになぁ」 「はあ?」 「気持ちを口にするのは苦手なくせに、エロい事はすぐ口に出る」 「それとこれは別だろ!!」  言わないとわからんだろ!……って、それは気持ちも同じか。なるほどなぁ。 「もういいから早くしろよ」 「わかったわかった」  ユキが俺の出したものを後ろに塗り付け、指をゆっくり入れてくる。準備しておいたから、俺のそこはすんなりと指を飲み込むけど、それがユキの指だと思うとまたも下腹部に熱が溜まる。  一週間ぶりだが、ユキはしっかり俺の良いところを覚えていて、早速全力でそこを責め立てた。 「ああっ!?やっ、んんっ、ユキ!…そこばっか…や、あぁぁっ」  腰が震える。またイきそう。俺ばっか出して申し訳ない。 「ユ、ユキっ…!はっ……あぁ…ヤメっ」  と、もう出るってところで、ユキが手を止めた。  はあはあと荒い息を吐き出しながらユキを見遣る。  ニヤニヤと笑っているのは、セックスの時はいつもだが、俺はその時、ちょっと嫌な予感がした。なんていうか、生物としての危機察知能力が働いた。 「入れて良い?」 「ん、うん」  ユキのちんこは相変わらずデカい。それも、すでに完全に勃ち上がりきっているから余計に。はやく欲しいと思う俺はクソビッチだ。 「ちょっと待って」 「え?」  ユキが徐に手を伸ばしたのはベッドの下の隙間だった。見えてはいないがそうだろう。  ゴムでもするのかな?と思った。いやでも、ユキはそんなこと気にはしないし、俺もそのままの方が好きなのに、とか考えた。 「さっき、何してもイイって言ったよな?」 「あ?まあ、言ったけど…俺が耐えられる範囲でなら、な」  最後かもしれないと思ったから、つい言ってしまっただけだったが、恋人になれた記念というか、嬉しさもあったからまあいいか、と軽く考えていた。 「じゃあ問題ないな」  と、言ったユキの顔は、物凄くゲスかった。 「お、おい!何考えてんだ?って、ユキ?俺の声聞こえてるか!?」  ユキはニヤニヤと笑ったまま、まるで俺の声なんか聞こえてないかのように、それを掲げて見せた。 「はー、やっとだ。ずっとやりたかったんだけど、マキ本当にイヤそうだったから」  俺は自分の顔から血の気が引くのを自覚した。 「や、やめろって!!引き返すなら今だ!まだ間に合うぞ!?」 「何言ってんの?何してもイイっつったのお前だろ」 「言ったけどそれは嫌だ!!」  というのも、ユキが持っていたのはいつのまに用意したのやら、本来排尿するための穴に突っ込む金属の棒だった。  入れて良い?って、それかよ!?  そんなものがこの部屋にあったなんて気付かなかった。掃除も全部ユキに任せっきりで、自分の部屋なのになにも把握できていないことが裏目に出た。 「マキはオレにウソつくの?」 「えっ!?」 「何してもイイって言ったのはお前だ」  再度放たれた言葉には、さっきまでの優しさや甘さは無かった。  黙る俺に、ユキは嬉しそうに笑った。沈黙を肯定と受け取ったらしい。 「じっとしてろよ。じゃねぇと痛いって、わかってんだよな?」  もうなるようになれ、と、俺は思考を放棄する。だってこうなったユキは止まらない。ベッドのシーツを握る。下半身が緊張して力が入った。 「できるだけ痛くないようにするから、な?頑張れマキ」 「うるさい!!」  ユキが俺のそこを掴んで、先端の割れ目を指で開く。弱いところが空気に触れて、ゾワっとした感覚が走った。  常備してあるローションを手に、先端と金属の棒にたっぷり塗りつけ、ユキは心底楽しそうに、ゆっくり棒の先を入れ始める。 「うあっ!……ぁあ…」 「どんな感じ?」 「ど、どんなって…自分でやれよ…」  痛くはない。でも、なんとも言えない変な感覚がするのは確かだ。あと小さな穴に割と太いものが入っていく様はかなりエロい。ケツに入ってるのは普段見えないから余計だ。  ゆっくり時間をかけて、ユキはその棒を最後まで入れきった。先端が前立腺を刺激する。 「ユキっ、手っ止めて!あああっ、そこヤバい!!」 「どこ?」 「ひやぁっ!?や、ヤメっヤメテ、あああああ!!」  緩く突かれる。その瞬間、俺の中で何かが弾けた。電気が走ったみたいに、背中をのけぞって堪えるが、そのビリビリとした快感を逃すことができなくて苦しい。  ガクガク震える俺を、ユキは恍惚とした顔で舐め回すように見ていた。その眼にすら感じてしまうのだから、俺もユキと同じくらい変態だ。  コイツがイケメンじゃ無かったらぶっ殺してやるところだが、好みの顔だしなにされてもいいや、といつもの如くビッチな俺は快感に身を委ねることに決めた。  そう決めてしまうと後は簡単だ。 「ああっ、ユキ!も、もうなんでもいい、からぁ!痛くても、イイか、らっ!好きにしてっ!」  自分で自分の言葉が信じられない。でも、どうしても快楽に弱い俺は、簡単にフシダラな言葉を吐き出す。 「オレお前のそういうところが、マジでたまんねぇ」  ユキの硬いそれが、俺の後ろの穴にズブリと入ってくる。途中、良いところに当たって、また出さずにイってしまう。 「ッッッ!?」  頭の中が真っ白に弾け、塞がれた先端から体液が溢れる。  そのままユキが最奥に到達し、なんの躊躇いもなく腰を打ちつけ始めた。 「うあっ……んん、あぁ…イっ、いやぁ!?」  容赦なく奥をガンガン突きまくるユキの手が、時たま俺の先端の輪っかになった金属を刺激して、それだけで何度かイったのに、ユキは全然止まらない。 「あは……ぁあ…ん……」 「どうした、マキ?良すぎて声も出ないってか?」  その通りだった。気を抜くと呼吸を繰り返すことも忘れそうだ。 「はあ、もう出そう…」  ユキが俺の身体を反転させ、後ろから覆いかぶさるようにして動く。全く力の入らない俺の身体を、ユキの手がガッチリ掴んで離してくれない。 「オレが出す時に抜いてやるからな」 「は、はやく……はやくしてっ……あああ、ふ……も、死ぬっ……」  わかったとばかりに、さらにエゲツないほど奥に打ち付けてくる。内臓が揺さぶられる感覚と、出せない熱が渦巻く感覚に、半分意識が飛んでしまっていた。 「マキ、マキ、愛してる。死ぬまで手放さないから」 「っ、な?なん、て?」  ユキが耳元で何か言ったが、出すことばっかり考えていたからわからなかった。  ああもうだめだ、本当に死ぬかもしれない。  そう思った時、ユキが俺の先端に刺さった棒を引っ張った。快感が全身を震わせ、ズルズルと抜ける棒と一緒に、溜まりに溜まったものが勢いよく飛び出る。 「いっ、ひゃああああああっ」  同時にユキの熱いものが中に放たれたのもわかった。  念願の開放感。全身の力が一気に抜ける。目の前がスパークしたままドサリと倒れる俺を、ユキの手が優しく支える。  またユキが何か言ったけど、聞き取る前に俺の意識はどこか彼方へと旅立った。

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