33 / 61
温泉旅行2
☆
宿への道のりは過酷だった。
電車を乗り継いで二時間ほど。途中、一時間半は特急列車に乗ったから、そこで遅めの朝ごはんを済ませた。
地方ローカル線の、レトロな(平成生まれのオレに、レトロがなんなのかはわからないが)車窓から外を眺める。移りゆく景色の中、遠方に海の青が見えてきた。
初冬の風に激しい波を立てる海は、海外で見る思わず飛び込みたくなるようなものではなく、どちらかといえば、サスペンスドラマで犯人が最後に飛び込むような海だ。
路線から海までの陸地には、日本家屋が軒を連ねる集落や、田畑がのべーっと広がっている。田舎と言えばそうだが、車さえあれば生活には困らなさそう、と言った印象だ。
……オレがどうして外ばかり見ているのか。
もちろん、隣に大人しく座るマキが、ドエロイ顔でローターと戦っているからだ。
白い肌を薄桃色に染め、悩ましげな表情で必死に股間を抑えている。はぁはぁと漏れる吐息に、時たま小さな喘ぎが混ざり、それとともにオレのちんこがピクッと反応してしまう。
そんなマキをずっと見つめていたいが、それはできない。だってここ外だから。人の目がある車内だから。流石に車内でマキをめちゃくちゃにしようなんて思いはしても(想像した途端ちんこがビクビク震えた)実際にはしない。なぜならオレは常識のある大人だからだ。
「…はぁ……ん」
「マキ、声漏れてる」
「う、うるさいっ…んふ…ぁ…」
可愛い。反抗的な物言いが、オレの嗜虐心を煽り立てる。
もっとイジメたい。信じられない、という顔をするくせに、最終的には嬉しそうな表情でヨガるマキは最高だ。現に今、マキはこのスリル満点の旅を楽しんでいる。顔がダラシない。トロンとした目で僅かにあいた口の端からヨダレ垂れそう。垂れた瞬間に舐めとってやろう、そうしよう。
目的の駅に着くと、多くの人がオレたちと同じようにそこで降りた。
温泉街として有名なこの辺りは、平日の昼前にもかかわらず、どこか浮世から離れた賑やかさがある。
多いのは女子学生や高齢女性グループ、高齢夫婦で、そんな人混みの中をオレはマキの手を引いて歩いた。
「ユキ…ちょっと待って」
いつになく無口で大人しいマキが、土産物が並ぶ街路の途中で言った。
「どうした?」
「どうした…じゃなくて、出そう」
マキを見ると、あいた左手で服の前をギュッと握りしめ、荒い息を吐いてなんとか押し寄せた快感の波をやり過ごそうとしている。
「はぁ……治った」
「治った?」
「ん」
「よく我慢できるよな。オレ出したくなったら止まれない」
「訓練が足りねぇんだよ」
ドヤ顔。可愛い。はやく押し倒してちんこぶち込みたい。
でも旅館のチェックインは午後だ。それまで我慢。
治ったというのは本当のようで、マキは相変わらず赤い顔で色っぽい息を吐きながらも、目についた土産物屋へ寄ったりした。
昼はその辺で食べ歩きできるものを買って済また。特に何かがあったわけではないけど、マキと初めての土地を並んで歩くのは新鮮で楽しい。
時折オレの手をギュッと握りしめ、ローターの刺激に耐えているのも可愛かった。
午後、チェックインの時間が来ると、オレたちは少ない荷物を抱えて旅館へ向かった。
そこは新装開店したばかりの大きな旅館で、リニューアルに伴って割引券を配布していたようだった。
綺麗にしたばかりの内装は、新築のような木の匂いが充満し、淡い照明が非日常感を醸し出す上品な旅館だ。
出迎えの従業員は皆礼儀正しくて、品のカケラもないオレたちに頭を下げる姿に少し申し訳なさを感じる。
「お夕食は18時にお持ちしますね」
離れに案内され、室内に荷物を置いたオレたちに、中居さんが丁寧な口調で言った。
オレが適当に頷いておくと、中居さんはニコリと愛想よく微笑んでから一礼して部屋を出て行く。
離れは広い畳の部屋で、床の間によくわからない掛け軸と花瓶があったり、まあよくあるような内装だった。テーブルのある部屋の隣に寝室があり、入口から見て奥の窓際には唐の椅子が二つとガラステーブルがある。入口左手には洗面所とシャワー室とトイレがあった。
露天風呂は窓の横のガラス張りの扉を空けてそのまま入れるようになっている。緑に囲まれた完全なプライベート空間で、オレはちょっと恥ずかしくなった。
今ここに、マキと二人きり。特別な空間だ。
部屋をウロウロしていたマキに目を向ける。こいつは何事にも淡白なので、特に顔色を変えることもなければ、何か感想を言うわけでもない。
多分、はやくちんこくれ!と思っていることだろう。
「いっぱい歩いて疲れたし、さっそくだけど露天風呂でも入る?」
オレは下心丸出しで言った。歩いて疲れたのは本当だが、マキのお尻を早く助けてやらないと。
マキはオレの言葉の意味をちゃんと汲んで、小さく頷くとそのまま着ていた服を脱ぎ出した。
一切の恥じらいもないところが、また可愛い。
★
ユキが露天風呂に入ろうと言った。顔を見ていればわかるが、ヤりたい!ヤりたい!と欲丸出しだ。
大人しく着ていたものを脱ぎ捨てる。こんなところに来ても、いつもどおりパンイチになるのだから、品もクソもないなと思う。
「マキのビチャビチャじゃん」
そらそうだろ、と冷静な俺は思った。ユキには言わないが、途中からローターの気持ちよさよりも、はやく濡れたパンツを脱ぎたいとしか考えてなかった。
緩い刺激だけじゃ満足できないどころか、慣れてくると途端に思考がクリアになる。俺今なんでケツにローター入れて歩いてるんだろう?という感じに。
「ちゃんとパンツの替えはたくさん持ってきた」
「用意周到かよ」
マジで変な所で有能なニートだ。
「露天風呂って初めてだ。マキは?」
「俺はオヤジと何度か旅行に行った。いつも露天風呂付きの個室だったから、逆に大浴場には入ったことがない」
「金持ちは滅びろ」
前も思ったが、ユキは金持ちに何か恨みでもあるのだろうか?
「マキと出会う前は、近くの銭湯に通ってた。懐かしいなぁ」
「そっか…俺ら結構長い付き合いになってきたよな」
露天風呂に向かいながら、なんだかシミジミとした空気となった。一緒に住んで割と時間が経つのに、ユキのことはまだほんの一部しか知らない。
滑らかな石造りの露天風呂へ身体を沈めると、少し熱めの湯が心地よかった。
ちなみに、ローターはまだそのままだ。
「何気に一緒に風呂入るの、初めてだよな」
「俺んちの風呂狭いしな」
「広い風呂のある部屋に引っ越そうとか予定は無いよな?」
「無いな」
そんな余裕はうちはなありません。
まだ明るい時間に、並んで風呂に入るというのはなんだか気恥ずかしい。
ユキの白くて引き締まった身体に、自然と視線が向いてしまう。もちろん顔はモロタイプだが、例え顔を隠した状態で、「ユキはどれでしょう?」と聞かれたら、間違えない自信がある。
「そんなに見つめられると勃つんだけど」
「どうせ既に勃ってるだろ」
「バレてた?」
「当然だ」
そう言うと、ユキがニッと笑ってから、俺の唇に軽いキスを落とす。チュ、と何度も音を立てながら、ユキの手が湯の中で自己主張を始めた起立を掴む。
「はぁ…あんまり触るとすぐイキそう……」
「頑張って我慢してたもんな」
「ん、ふぅ…ぁ」
ユキの舌が首筋や耳の裏を舐め回し、その感触にゾワリと肌が泡立った。相変わらず続くローターの振動と相まって、今まで耐えていたものが一気に溢れそうになる。
「オレのも触って」
耳元で囁かれるままに、俺はユキの既に硬いものを握る。何度身体を重ねても慣れることがないくらい、ユキのは大きくて、はしたない俺ははやく挿れて欲しいと考えてしまう。
しばらくお互いのものを握ったまま、キスを繰り返していると、ユキがオレの身体を抱えて自分の膝に誘導した。
「たまには自分で挿れてみて」
「その前にローター抜いて」
「それはムリ」
ユキを睨むと素知らぬ顔で、だけど腰に添えられた腕は力強く、逃れることはできそうにない。
「しゃあねぇな」
本当にいい趣味してんな、コイツ。
半ば呆れたまま、俺はユキのいきり勃つものを自分の尻にあてがう。グリグリと押し広げられる感覚と共に、多少の湯が侵入していつもより熱を感じる。
「んっ、ふぁ、ああ……」
「もうちょい入るだろ」
「ま、待って…ローターが…奥に、」
ユキの大きなもので、中で動くローターがさらに奥へと入り込もうとする。そのせいで、一抹の不安が脳裏を過ぎり、なかなかユキの全てを飲み込むことができない。
そんな俺の腰をがっしり掴むユキが、一瞬悪い顔で笑ったのが目に入った。
「怖がりか」
「うるさ、あああああっ!!」
グチュっとゼリーを潰したみたいな音がして、ユキが俺の内部を一気に抉った。目の前を火花が散る。震えて空をかく俺の腕をユキの腕が自身の肩へと導く。そのまま、俺はユキに思い切り抱きついたまましばらく動けない。
「はぁ…は、ぁぁ…ヤバいイキそうっ」
「ダメ。自分で動いてオレを気持ちよくさせて」
「ムリっ、ムリだって!」
ユキが緩く腰を動かすのに合わせ、ローターが内臓に電気のような刺激を与えてくる。今にも果てそうな俺自身を、ユキが強く握った。
「いひゃぁ…ぁぁ…はなし、てっ」
「動いてくれなきゃ離さない」
既に頭が真っ白の俺は、出したい欲求に忠実で、言われるがままに自分で腰を上下に動かす。閉じた目蓋から涙が流れるのがわかる。
逸らした上体は無防備で、それをユキが放っておくわけもなかった。ガリッと歯を立てて、胸を噛まれ、その痛みで自分が出さずにイッたのがわかる。
「ひぁあ……あっ、ぁぁあ、んっ、ぅあ……」
執拗に噛まれ続けるその痛みが、俺の思考を全て奪い、出せない快感の波が全身を痙攣させ、訳もわからないままただ喘ぎを漏らすことしか出来ない。それでもユキは、ただ楽しそうに俺のそこを握りしめて離そうとしない。
「可愛い。オレのマキ…」
ユキの力強い腕が俺の腰を片腕で抱え込み、そのまま姿勢を反転させていつものバックに切り替える。冷たく濡れた石の床に上体を投げ出された俺は、無意識に掴まるものを探す。でもそんなものはなくて、ユキの力任せな動きを全部受け止めるしかない。
ローターが腹を突き破るんじゃないかと思うほどユキの突きは容赦なくて、肌と肌がぶつかる音と穴を抉る水音が激しく辺りに響き渡る。
「んんっ、あっ、はあ……いやぁっ、うぁ…」
「マキ、マキ…」
ユキも我慢していたようで、いつもより上り詰めるのが早い分激しかった。
ドクッと一度大きく脈打ったユキのものから、いつものように熱いものが放たれ、同時に解放された俺のものもダラダラと体液を溢れさせる。なかなか引かない射精感に気が狂いそうだ。
「はあ…マキの尻最高」
尻だけかよ、と言いたいが、口を開けば出てくるのは震えた吐息だけだ。
ユキは自身を引き抜くとすかさず指を突っ込んで左右に拡げる。その刺激でまた軽くイキそうになる俺に、容赦のない要求が突きつけられた。
「自分で出して。ローターと、オレの精液」
「……ムリ、も…力はいんない」
「頑張れって」
バシッとケツを叩かれ、そんな行為にも興奮する俺はどうしようもない変態だ。
「んんっ、ふぅ……ん」
「マキの中ビクビクしてるの丸見え。ヤバいくらいエロいよ」
「言わなくて、い、から…ぅんっ…」
排泄の感覚と同じものを、四つん這いで感じるという複雑な気分だが、正直にいうとめちゃくちゃ気持ちいい。
ユキが俺のヒク付くイヤらしい穴を見つめているのも、まだ明るい空の下でしているという事実も、ド変態な俺には最高のシチュエーションだ。
「うぁぁっ…はぁ…はぁ」
ヌルヌルとした感触と共にローターとユキの精液が排出され、カランと音を立てて落ちる。
「最高」
「ド変態」
「マキもだろ」
そんな事をした後でも、俺たちは互いに笑い合えるのだから、恋人と価値観や趣味が同じというのは重要かもしれない、なんて思いながら、俺たちは露天風呂を満喫した。
ともだちにシェアしよう!