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第10話 契約 ②
「もし噛もうとしたら?」
「社会的に死を意味する…」
太一の顔が真っ青になった。
「そうだったね。頸を噛もうとしただけで、俺の弁護士から太一は社会的に、もう立ち直れなくなるぐらいにされるんだよね」
太一とは正反対に、智樹は華《はな》が咲き乱れるような満面の笑みを浮かべる。
「太一は俺との約束守ってくれてて嬉しいよ。今も本当は俺に触れたいの、我慢してくれてるんでしょ?」
わざと智樹は太一の口元に自分の唇を近づけると、太一は急いで顔を背けた。
「これからもずっと、智樹君に逢いたいから…、俺は絶対約束は守る」
太一は智樹に顔を背けたままだ。
「太一、俺の事を大切にしてくれてありがとう。だから今日は特別に…」
その言葉を聞いて、太一の顔がパァーっと輝く。
期待している顔。
だから期待に応えてあげるよ。
「特別に俺を抱きしめていいよ」
太一の目は驚きで見開かれが、
「本当に…いいの…か?」
智樹の言葉に太一は疑心暗鬼《ぎしんあんき》になっている。
ここで追い込もう。
ゆっくりと太一に智樹が近づくと、自分から太一に抱きついた。
「‼︎智樹……くん……」
太一は震える腕を智樹の背中にまわす。
「いいよ…。俺をキツく抱きしめて…」
「……」
智樹の言葉に導かれるまま、太一はキツく智樹を抱きしめた。
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