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第11話 黒い部分
「太一、お願いがあるんだ…」
太一の胸に顔を埋めた智樹が、甘えた声を出すと、太一は真剣な顔で智樹を見つめる。
「今、雅樹に悪い虫がつきそうなんだ。俺、それが悲しくて…」
そこまで智樹が言うと、
「智樹君を悲しませるヤツは許さない。俺に任せて…」
太一は怒りに満ちた声で言い放った。
「俺の会社専属探偵にそいつを探させるよ。分かり次第、智樹君に報告する」
自信に満ち溢れた太一が智樹をもう一度、抱きしめる。
「俺のために、ありがとう。頼りにしてる」
「智樹君…」
智樹に『頼りにしてる』といわれ、太一は顔を高揚させた。
「次、報告してくれる時、俺、ホテルで太一だけとゆっくり食事したいな」
含みを持たせた言い方で、智樹は太一を見上げた。
これで太一と会わなくて大丈夫な言い訳と、雅樹に近寄ろうとしている人物の特定してくれる約束に取り付けた。
次は…、幸樹兄さん。
危害はなさそうだけど、一応、早見さんにも話をしておいて……。
さて、その前に太一に最後の仕上げをするか…。
智樹はゆっくりと太一から体を離すと、
「見ててあげるから…、今日も一人でする?」
智樹がそう言うと、太一が嬉しそうに顔を綻ばせ頷き、智樹は太一の目の前に置かれた椅子に座る。
すると太一は自分のスラックスをおろし、硬くなった楔を弄り、智樹に見られ喜びを感じながら自慰をする。
そんな太一の姿を、智樹の整い可愛らしい顔で微笑みながら見るが、瞳だけは冷ややかな視線を送っていた。
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