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第14話 早見 徹 ③

「早見さんは俺が高1の時、ストーカーに付け回されて困っているところを助けてくれて、大企業である祖父の会社の専属弁護士が決まっていたのに、その話を蹴ってまで俺専属のボディーガードになると、名をあげてくれました。そんな恩人、特別でない訳ないじゃないですか」 智樹は早見の手を取り握ると、 「!!!!」 驚きで微動だにできなくなっている早見の手を掴むと、その手の甲にキスを落とした。 そして、 「ほら、俺の心臓。緊張しすぎて、こんなにドキドキしてる」 握った早見の手を、そのまま自分の左胸に当てると、恥ずかしそうにしながら、心臓の音が早見の掌に伝わるようにする。 「ね、早見さんは特別なんです」 智樹が下から見上げるように見ると、早見は智樹の顔を見つめ、抱きしめようと腕を伸ばすが、その腕を下に降ろした。 「抱きしめて…、くれないんですか?」 智樹が早見の手を握ると、 「俺は他の奴らとはちがう。智樹君からしたいと言われない限り…、智樹君からしてくれるまで、俺からはしない」 早見は智樹に性的なことは要求しない。 それは彼なりの、他の人との差別化だ。 『俺はいやらしい気持ちで、智樹のそばにいるのではない』と。 「だったら今ここで俺が早見さんと重なり合いたいって言ったらどうしますか?」 智樹が探りをいれると、 「理由はわからないけど、今、智樹君は誰ともしたくないんだろ?だったら俺は無理強いさせたくない…」 今度は早見が智樹の手を取り、手の甲にキスをした。 早見さんはやっぱり紳士的だ。 だから… 「次は…もっと甘えてもいいですか?」 智樹が早見に抱きつくと、早見は嬉しそうに智樹の頭を優しく撫でた。

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