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第15話 リスト
最後は幸樹兄さんか…。
まるでToDoリストをこなしていくように智樹は早見の運転する車で、会社本社にいる幸樹のところへ向かった。
智樹の祖父が会長を務める大企業は、父が社長、長男の幸樹が次期社長で、今は副社長を務めている。
巨大なビルの本社の入り口から2人が入ると、受付の女性に笑顔で迎えられた。
「副社長はいらっしゃいますか?」
会社の人間、誰に対しても尊敬語で話す智樹は、誰がみても品行方正 で、まさか本性があんなに腹黒く闇を隠しているということは、誰も微塵にも思っていない。
「副社長はこの後会議に出席されるのですが、智樹様が来られていると一度、連絡を入れてみます」
そういって、受付から幸樹へ電話し確認がされた。
幸樹兄さんは会議中でない限り、多分、俺を何よりも優先する。
ほら、いまだって…
受付の女性が電話の受話器を置くと、
「智樹様の事を、部屋で待たれるそうです」
と告げた。
ほら、やっぱり。
本当は分刻みのスケジュールで忙しく、アポ以外の面会はできないはずなのに。
「そうですか。いつもお忙しい中、私の急なお願いにも取次いでくださり、ありがとうございます」
智樹は微笑み、受付の女性へおの礼の言葉も忘れない。
「いえいえ、そんな。いつでもおっしゃってください」
受付の女性は智樹の微笑みに照れを見せつつ、智樹と早見の背中を見送った。
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