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第35話 可愛いメール

しばらくするとメールで 『家の近くに車を停めた。今から門まで迎えに行く。門についたら、またメールする』 電話の時の優しい感じのメール文ではく、まるで事業報告のメールのようだ。 これ本当に早見さんからの、プライベートメール? そのメールの書き方に、智樹は笑ってしまう。 2分ほど経った時、またメールが入る。 『門の前についた。影に隠れてるグレーのジャージ姿が俺。不審者じゃないから安心して』 なんだよ、これ。 変なメール。 智樹は早見からのメールを、可愛いと思ってしまった。 智樹は音を立てないよう細心の注意をはらい、玄関を出ると、メールに書いてあった通り、グレーのジャージ上下の男が立っている。 「早見…さん?」 智樹が恐る恐る声を掛けると、 「智樹君、早かったね。車まで少しあるけど歩ける?」 智樹の顔を覗き込むと、早見の前髪がサラリと(なび)く。 「大丈夫です。見つからないよう家を出て来たので…。それより早く行きたいです」 智樹が早見の手を取り、前に進もうとすると、 「智樹君、車あっち」 早見は智樹が進もうとしていた真反対を指し、さっきの智樹の行動が可愛いかったというように笑った。

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