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第37話 モヤモヤ? ①
早見と智樹。
2人車に着き、早見が後部座席のドアを開けるが、
「あの…、助手席に座っても…いいですか?」
智樹が助手席の方を指さす。
「そっか。1人の後部座席は嫌だって言ってたもんな。さ、どうぞ」
早見は助手席側に移動すると、車のドアを開けた。
「ありがとう…ございます」
いつも智樹が乗るのは会社の車。
だが今から乗る車は、黒のボル○の四駆。
早見のプライベート車だ。
「出発するよ」
「はい!」
いつも目的地が決まっていて、目的地に行く交通手段にだけに智樹は車を使っていたが、今日は行き先はわからない。
それが智樹をドキドキさせた。
助手席からじっくり早見を見ると、いつもはオールでバックセットされている黒髪も、今はセットされておらず髪は下ろされ、仕事中はコンタクトなのだろうか、今は黒い縁《ふち》のメガネをかけている。
グレーのジャージ上下と言われた服は、有名メーカーのロゴが入っていて、よく見ると履いているスニーカーも同じメーカーだ。
いつもの早見さんは、きちっとした雰囲気だけど、今は本当にラフな装いだな。
別人みたい。
「早見さんって仕事の時と、プライベートでは雰囲気が全然違いますね」
「あー、よく言われる」
よく言われるって誰に?
プライベートでも会う人って誰?
智樹の胸がモヤっとする。
おかしい…
俺は雅樹のことが好きで、雅樹のことしか見えていないのに、どうして今の話でモヤっとするんだ?
早見さんは俺しか見てないはず……
智樹の胸はますますモヤモヤする。
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