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第43話 夜景 ①

「次はどこ行きたい?」 また当てもなく早見が車を走らせている。 「次は……」 智樹は少し考えて、 「今度こそ、夜景、見に行きたいです!」 元気な声で早見に告げた。 「さっきはちょっと嫌そうだったけど、本当に夜景でいいの?」 「はい。今は見たい気分です」 夜景は幸樹兄さんと雅樹との記憶しかないけど、そこに早見さんとの記憶も作っておきたい。 智樹の元気になった声に、早見は安心したような表情を浮かべる。 「じゃあいきますか」 早見は少し車のスピードを少し上げ、山道を登り、夜景が見える展望台をめざした。 暫く車を走らせ山道を登っていくと、見晴らしのいい広場のようなところについた。 他に停まっている車はなく、フロントガラスから見える景色は、ビルから漏れる光が光っていたが、時間が時間なためか、その数は少ない。 「ちょっと光が少なくて…申し訳ない。本当はもっと綺麗なんだけどな〜」 早見が頭を掻く。 「いえ、綺麗です…」 智樹は空を見上げていた。 雲ひとつない夜空には丸い月が大きく光り、一等星なのか二等星なのか、いつもは見えない、いや、見ようとしていなかった星も輝いている。

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