42 / 87
第43話 夜景 ①
「次はどこ行きたい?」
また当てもなく早見が車を走らせている。
「次は……」
智樹は少し考えて、
「今度こそ、夜景、見に行きたいです!」
元気な声で早見に告げた。
「さっきはちょっと嫌そうだったけど、本当に夜景でいいの?」
「はい。今は見たい気分です」
夜景は幸樹兄さんと雅樹との記憶しかないけど、そこに早見さんとの記憶も作っておきたい。
智樹の元気になった声に、早見は安心したような表情を浮かべる。
「じゃあいきますか」
早見は少し車のスピードを少し上げ、山道を登り、夜景が見える展望台をめざした。
暫く車を走らせ山道を登っていくと、見晴らしのいい広場のようなところについた。
他に停まっている車はなく、フロントガラスから見える景色は、ビルから漏れる光が光っていたが、時間が時間なためか、その数は少ない。
「ちょっと光が少なくて…申し訳ない。本当はもっと綺麗なんだけどな〜」
早見が頭を掻く。
「いえ、綺麗です…」
智樹は空を見上げていた。
雲ひとつない夜空には丸い月が大きく光り、一等星なのか二等星なのか、いつもは見えない、いや、見ようとしていなかった星も輝いている。
ともだちにシェアしよう!