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第50話 朝帰り ①

智樹が玄関を開けると、部屋の中はまだ静かだったが、キッチンのドアから照明の光が漏れている。 しまった… 時間的に母さん起きてたか…。 キッチンの前を通らないと自室に行けない智樹は、そーっとキッチンの前を通り過ぎようとした時、  ーーガチャリーー ドアがそっと開き、母親が顔を出した。 「あの…、その……」 智樹が言い訳を言おうとした時、 「し〜…」 母親は自分の人差し指を立て、口の前に当てた。 そして 「お父さんに見つからないようにね」 小声で囁くと智樹の頭を撫で、そっとキッチンのドアを閉めた。 ありがとう、母さん…。 智樹は母親の気遣いに感謝をしつつ、自室のドアを開けると、そこには智樹のベッドに座った雅樹がいて、雅樹は自分と智樹が忘れて行ったスマホを持ち、部屋に入ってきた智樹の顔を睨んでいる。

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